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今回は、会社を辞めずとも、自分のやりたいことを実現する方法を掘り下げてみたいと思う。すなわち、「会社から愛される方法」を自ら会社に提案することだ。前回もお話したように、これには、大きく2つの方向性がある。わかりやすいのは、社内ベンチャーとして新規事業を提案し、立ち上げることだ。
最初はプロジェクトチームのような形をとることが多いだろう。成功すればゆくゆくは事業部組織にまで成長するかもしれないし、グループ会社として独立するかもしれない。
もう1つは、自分の望みのポストに就くという方法だ。すでにあるポストに手を挙げて就くことを想像しがちだが、それまで会社にはなかったポストや存在はしていたけれど重きを置かれていなかった仕事に日の光を当てる、といった“ポスト創造”の方がより劇的だろう。
社内ベンチャーのケースとしては、前回のシリーズで紹介した博報堂のお二人のケースなどが端的であろう(本連載第8回参照)。そのうちの一人は、東北の被災校を支援するための「ウェブベルマーク」という新しい仕組みを作り上げ、ムーブメントを起こした今宿裕昭氏だった。
社内ベンチャーを成功させる人の
絶妙なポジションの取り方
ウェブベルマークとは、協会のサイトを経由して協賛企業から商品を購入するなどすると、売上に応じて一定額が協賛企業から自動的に協会に寄付され、被災地3県の小中学校や特別支援学校のために使われるというもの。裏を走っているのはアフィリエイト広告の仕組みだ。
ウェブベルマーク協会はベルマーク教育助成財団のほか、博報堂をはじめとする4社が作った協会であるが、今宿氏が仕掛け人である。彼は権利関係も含め、この仕掛けを実現するのに、社内にその重要性を認めさせ、財団や新聞社など関連する企業を巻き込んでいった。
昔からそうした事業をやりたいと思っていたのではない。会社側にそうしたニーズがあったわけでもない。東日本大震災をきっかけに、何か被災地のためになることがやりたいと真剣に考え、社内の最初の理解者とディスカッションすることで辿りついた1つの答えだった。
会社に認められる社内ベンチャーのテーマ設定は簡単ではない。ただ、自分のやりたいと思うことを主張しても、それだけでは認められないことが多い。会社がやりたがることを見極める必要がある。とりあえず否定されずに企画することが許されるかを、見極める必要がある。
会社ごとに、これはやらないというタブーもあるだろう。そこは避けるのが常道だが、逆に、そのタブーを覆して成長戦略を描くという荒業もあり得る。
どのような場合でも自分がやりたいことに固執するのでは平行線のままだ。会社側は絶対に歩み寄ってはこないと考えたほうがいい。こちらがいかに会社にすり寄るか、しかない。