シャープの混迷に見る
経営者の問題

 ここまで何回か「企業の方向づけ」について、説明をしてきました。経営とは①企業の方向づけ、②資源の最適配分、③人を動かす、の3つです。この3つのことをどれだけうまく行うかが経営者の仕事で、それが企業の命運を決めるのです。とくに①の企業の方向づけがとにかく何よりも大切です。

社員がついてこなくなる経営者の「言い逃れ」小宮一慶 小宮コンサルタンツ代表

「方向づけ」とは何をやるかやめるかを決めることですが、これを間違うと、どんなに優秀な人が働いて頑張っても結果は出ません。もちろん、働く人、株主、取引先など、だれも幸せになれないわけです。

 シャープが、2015年3月決算で2223億円もの最終赤字を計上することとなり、国内だけで3500人、海外を含めると5000人を削減すると発表しました。もちろん、企業経営には運、不運の部分もありますが、私は今回のシャープの一連の報道を見て、経営という観点から、かなり違和感を持ちました。

 今回は、その問題と、さらには銀行の動きなどからシャープの今後を考えてみたいと思います。

「違和感」を持ったと書いたのは、次のような内容の報道が決算が発表された翌日の日経産業新聞の1面に載っていたからです。

 現社長へ社内から、方向づけをはっきりさせてほしいということがあったのに対し、現社長は、自分が方向づけをしたら下の人が育たないという旨の発言をしていたというのです。