スーパーでは98円で売っている500mlのペットボトルのお茶が、自動販売機では150円で売っているのはなぜでしょうか。今回ご紹介する『スタバではグランデを買え!』を読めば、値段の裏にある企業の意図がよくわかります。

スタバのコーヒーやDVDの値段から
経済の仕組みを読み解く

吉本佳生著『スタバではグランデを買え! 価格と生活の経済学』 2007年9月刊。著者の吉本先生を描いたロゴ(?)が印象的です。

 心やさしい、良識派エコノミスト――。本書を含め、吉本佳生氏の著作の多くは、「生活者の視点」で貫かれています。

 週刊ダイヤモンド5月23日号の特集「投資の鉄則」の中でも、金融商品の真贋を見分け、買っていい商品と買ってはいけない商品をズバリ指摘する“良識派専門家”の一人として登場しました。

 吉本氏の著書は「生活者」あるいは「普通の人々」の腹に落ちるよう、経済の論理や仕組みが懇切丁寧に説明されます。本書の「はじめに」にもこうあります。

 本書では、一貫してコスト(特に手間というコスト)の観点から私たちの生活を分析します。その中で、ひとつでもふたつでも、読者が消費生活の中で普段抱いていた疑問を解決することができれば、と願っております。(11ページ)

 その疑問はよく練られています。たとえば、次の通りです。

〇ペットボトルのお茶はコンビニとスーパーのどちらで買うべきか?(第1章)
〇大ヒット映画のDVD価格がどんどん下がるのはなぜか?(第3章)
〇携帯電話の料金はなぜ、やたらに複雑なのか?(第4章)
〇スターバックスではどのサイズのコーヒーを買うべきか?(第5章)

 こうした疑問について、いわゆる原価ではなく、買い物の時間や労力、心理的負担など取引にかかわるコストをものさしとして考えてみよう。すると、同じモノを違う価格で買うことにも合理性があることに気付く。逆に違うモノを同じ価格で売ろうとする企業の狙いや背景も理解できる、というのです。

 ものさしは取引コストだけではありません。「規模や範囲の経済性」(第2章)、「比較優位」「機会費用」「モラルハザード」(第7章)、「サンクコスト」(第8章)といった経済学の重要キーワードもうまく配置され、本書を読み進むうちに、経済の仕組みがきちんと理解できるようになっています。