実に、大阪府と大阪市は134事業において類似の事業を行っている。「大阪府中央卸売市場vs大阪市中央卸売市」「大阪府中小企業信用保証協会vs大阪市信用保証協会」「大阪府道路公社vs大阪市道路公社」「府立病院vs私立病院」「府立大学vs私立大学」「府立体育館vs市中央体育館」「府立門真スポーツセンターvs大阪プール」「府消費生活センターvs市消費者センター」「府立公衆衛生研究所vs市立環境科学研究所」「府立現代美術センターvs市立近代美術館」などの非効率性が指摘されてきた。

「市営地下鉄」の交通アクセスの悪さも指摘されてきた。市営地下鉄は、大阪市内のビジネス街である本町をほぼ中心に南北と東西に路線が伸びているだけで、他県や他市へ延びる私鉄との相互乗り入れは、ほぼゼロに等しい。いわゆる「大阪市営モンロー主義」によって、私鉄大阪市中心部への進出は拒否され続けた。これは、大阪の発展を阻害している原因の1つとされてきた(高橋洋一『「大阪都構想」を逃せば大阪の衰退はさらに進む』)。

 更に言えば、大阪府が関西国際空港の対岸に256メートルの超高層ビル「りんくうゲートタワービル」を建設したら、大阪市も負けじと、WTCという同じ高さ256メートルのビルを建設し、どちらも経営破綻したことも挙げられる。

 これら大阪府・市が抱えるとされる問題について、106人の学者は、ほとんど有効な反論をしていないように思える。かろうじて反論と思われるものとしては、大阪府立体育館と市立体育館の「役割分担」論については言及がある。府立体育館は大相撲春場所など、トップレベルのイベントを開催し、市立体育館は市民に密着したサービスを行っている。どちらも稼働率は高く、うまく役割分担をしていて、府民・市民の満足度が高いということを主張している。

 府民・市民の満足度が高いのは結構なことだ。ただ、満足度が高くても、前述の通り、府と市の財政状況を振り返ると、本来維持できない過剰なサービスを、財政赤字を垂れ流しながらやっているのではないかという疑問を持ってしまうのは自然なことだろう。1つの体育館で、タイトなスケジュールをやりくりしてビッグイベントと市民サービスをなんとか両立させていくというのが、身の丈に合った行政サービスではないのか。この疑問に対して反対派が応えるには、やはり「財政赤字をどうするのか」についての見解を示さねばならないはずだ。

 また、反対派は「今の制度でも二重行政は解消されており、大阪市を廃止する必要はない」と主張している。現在でも、大阪府と大阪市の間に調整会議というものが設置されている。そこで話し合いをすれば二重行政は解消できるというのだ。しかし、大阪府と大阪市が「100年戦争」と呼ばれる「犬猿の仲」であることは、誰もが知る現実ではないか。