正直に言って、橋下市長の「独裁」など、可愛いものではないか。住民投票で市民に「NO」と審判を下されたら、それで「政治家を辞める」という程度の、あっけない、薄っぺらいものだからだ。政治学者として、大騒ぎして批判するほどの価値もなかったのだ。それよりも、極めて根が深く、複雑で、実態を掴むのが困難な大阪市の「既得権の闇」の問題こそ、政治学者が逃げることなく、正面から追及すべき問題ではないか。これこそが、政治学者としての矜持であるはずだと、筆者は考える。

 要するに、106人もの学者の方々が、それぞれの専門的観点から「大阪都構想」が様々な問題を抱え、論外なものだと主張していることはよくわかった。その内容も説得力があった。しかし、大阪都構想が論外ならば、大阪府・市が直面してきた深刻な問題の数々に対して、どのように取り組むのか、対案はほとんど示されていない。

 橋下市長は不十分なものであっても、大阪都構想という解決策を市民に提示した。反対派も、まさか本気で現状維持がベストと考えているわけではあるまい。少なくとも、69万人の市民が、大阪府・市の現状に問題ありという民意を示したのは明らかだ。なにもしないというのでは、府・市民の納得は得られない。反対派も、責任を持って大阪府・市の問題の解決策を示してもらいたい。

寝業師政治家の家系・松野頼久に対する
野党再編への期待

 維新の党は19日、代表を辞任した江田憲司氏の後任の新代表に、幹事長だった松野頼久氏を選んだ。民主党出身の松野氏は、民主党との連携を軸とする「野党再編」に積極的であることで知られる。民主党との連携に消極的だった橋下市長、「壊し屋」としての策士ぶりが警戒されがちな江田氏が後方に下がり、松野新代表が先頭に立つことで、野党再編が一挙に進む可能性がある。

 筆者は松野新代表に期待しているところがある。祖父に吉田茂元首相を政界に引き込んだとされる「ズル平」こと松野鶴平氏、父親に細川護熙・小泉純一郎の改革派の首相2人の後見人を自認した松野頼三氏を持つ、「寝技師」の家系から出た三世議員である。少なくとも、祖父や父の姿を見て、事を成すために見えないところで汗をかくことの大切さを知っているはずだ。

 これまで、野党再編がなかなか進まなかった理由の1つは、野党側に裏方で汗をかける政治家がなかなかいなかったからだ。

 民主党の政治家は、「自分が一番優秀だ」と考えていて、なかなか他人に頭を下げることができない者が多い。一方、再編の推進役となるべき「第三極」は、渡辺喜美氏の「みんなの党」、橋下市長の「維新の党」と、強烈な党首のキャラクターを前面に押し出した政党で、政党間を調整する役を担えなかった。これまで、江田氏を中心に、政党を壊しながら進んできた少しずつ進んできた野党再編だが(第92回)、江田氏のやり方に反発も大きかった。寝業師・松野新代表が前面に出ることで、再編が本格化することを期待したい。