自衛隊のリスクははるかに高くなる
否応なしに「戦闘」の世界に

 今までは自衛隊の活動できる範囲を「非戦闘地域」に限定していた。しかも、輸送と言っても拠点輸送しかやっていない。前線部隊にまで弾を運べるというのが、今度の法制ですから、そういった活動をすれば、他国の軍隊と一体化するかどうかは別として、一言で言えば敵のターゲットになるということです。

 非戦闘地域というのは、一応、敵が出てこないことを前提にしていたわけです。しかし、新法が定めているように、現に戦闘が行われていない地域ならば活動していいということは、敵は残存している可能性があるということなんですね。敵がいるところでそういった活動をすれば、まず狙われるのは兵站部隊ですから、非常に危険になる。

 この場合の武器使用の基準は「自己保存のための武器使用」しかないのですが、それで襲われる確率が高ければ、自己保存として戦闘に入っていく可能性も高い。総理の説明では戦闘が起こりそうになれば活動を中断すると言っているけれども、中断するのは前線部隊を見殺しにするということですから、中断なんかできないですよ。やはり自分も応戦して、その場に留まらなくてはいけなくなります。

 もう一つは、国連統括外の活動も支援の対象に入っているということが、何を意味しているかです。イラク戦争後のイラクの治安維持は国連の統括外でした。アフガニスタンのISAF(国際治安支援部隊)も国連決議はあったけれども、国連のオペレーションではなく、あくまでアメリカ軍、NATO軍の統括の下でやっていた。今回の法律ではそういったこともやれるようになるということです。これはそれ自体でものすごく危険ですし、さらに武器使用基準も「任務遂行のための武器使用」ができる。

 PKOで自衛隊は、要員を防護するための武器使用、通常Aタイプと言われる「自己保存のための武器使用」しかできなかったけれども、今度は自衛隊がある目的地に行こうとして、そこに立ちふさがるやつがいれば、武器を持って追い散らすような、「任務遂行のための武器使用」、通常Bタイプと言われる武器使用ができる。これは何だと言ったら、戦闘ですよ。こんなことをやったら、相手も殺すし、こちらも死ぬということです。だからこれもこれまでとは質的に違う。

 質的に違う結果どうなるか。Aタイプに加えて、いわゆるBタイプの武器使用ができるとなれば、各国の軍隊と武器使用基準が同じになる。先ほどのグレーゾーンにおける例では、自衛隊法95条の改正で米海軍と平時のROE(交戦規程)が共通化すると指摘しましたが、こちらもPKOの陸上活動で、普通の軍隊と同じROEが持てるようになる。結果、殺したり殺されたりということになるわけです。

 当然、やられるリスクがこれまでとは比べ物にならないくらい高まります。

>>「安保法制と日米ガイドラインは日本の抑止力を高めない(下)」(6月2日掲載予定)に続きます。