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3月2日、東京電力のホームページ上に出されたお知らせを見て、あるメーカー関係者は戦慄した。
それは「電気メーター検針員募集の案内(武蔵野支社)」。使用した電力量を目視確認する検針員を募集するものだった。
なぜ、このお知らせが関係者たちの注目を集めたのか。それは、東電がその1カ月前に、武蔵野支社がカバーする多摩地区で、スマートメーターを活用したサービスの先行導入を発表していたためだ。
スマートメーターは「次世代電力計」ともいわれ、ITを駆使して電力データをリアルタイムでやりとりするもの。検針員の必要がないのが特徴である。だが、多摩地区では、逆に検針員の募集をするという不可思議な事態が起きていたのだ。
「東電のスマートメーターは、東芝が担当した通信部分がほとんど機能していないためだ」。複数の関係者がその理由を説明する。
東電は、2012年にスマートメーターの国際入札を打ち出し、電力のIT化を一気に推し進めたのだが、そこで、メーターの根幹である通信部分を破格の安値で落札したのが東芝だった。
だが、通信の経験に乏しい東芝が開発した通信ボードは、当初から不具合だらけだった。
「今も、通信の接続がうまくいっていないので、日々“つながらない”メーターが次々と各家庭に付けられている」(メーカー関係者)