川崎臨海部の風景。「ザ・工業地帯」という雰囲気 Photo by Kenji Momota

 川崎の臨海部といえば、日本屈指の巨大工業地帯である。首都高速の神奈川1号横羽線、または湾岸線を走れば、その規模は一目瞭然だ。

 面積は、川崎市全体の約20%に及ぶ2800ha。事業所数は約460、従業員数は約2万6000人(平成24年工業統計)である。また発電施設で見ると、大小17の発電所があり1日に約630万kWの発電能力がある。これは1都3県の全一般家庭の消費電力に相当するほどの規模だ。

 1960~70年代の高度経済成長期、川崎臨海部には公害という負のイメージが定着した。同時期に横浜市内に居住していた筆者は、川崎を含む京浜工業地帯の影響による光化学スモッグを体験している。

 その後、バブル期を経て“失われた20年”と言われた頃、川崎臨海部は産学官の連携によりクリーン化が進むと同時に、日本の産業構造の変革によって大手事業所の撤退が相次いだ。それら跡地を利用したレジャー施設の建設計画等のニュースを断片的に聞いた記憶がある。また、『工場夜景クルーズ』がデートコースとして人気とも聞いていた。

 だが、筆者がこの地域に実際に足を運ぶようになったのは、つい最近のことだ。目的は、太陽光発電や水素関連の事業に対する情報収集である。

 そうしたなか、2015年4月20日、川崎マリエン(川崎港振興協会コミュニティ施設:川崎市川崎区東扇島)で“世界初”となる最新型水素施設の記者発表会に参加した。

世界初の自立型水素エネルギー
供給システム「H2One」とは?

「H2One」のユニット全体。太陽光パネルの配置位置は様々なアレンジが可能。川崎マリエンの展望台から撮影 Photo by Kenji Momota

 いまにも降り出しそうな空模様。テニスコートに隣接する場所に、TOSHIBAのロゴがある大きなボックスが3つ並んだ。その奥手のバーベキュー施設の屋根に大型の太陽光パネルが見える。

 これは、自立型水素エネルギー供給システム(H2One)の実証試験施設である。東芝は、2015年4月6日、東京都の府中事業所内に水素エネルギー研究開発センターを開所した。その際、「水素インフラ事業」に関する資料を発表し、2020年に水素関連事業の売り上げで1000億円を目指すとした。そのなかに「H2One」が組み込まれている。

 同資料では、市場環境として水素・燃料電池関連の機器とインフラ産業の市場規模をグローバルで2030年に40兆円、2050年に160兆円と見込んだ。そのうえで、水素事業のグランドデザインとして、「つくる・はこぶ・つかう」を提唱。「つくる」では水電解と副生水素(*)。「はこぶ」では船舶・車両・配管による輸送と水素貯蔵施設の設置。そして「つかう」では、水素発電、EMS(エネルギー・マネージメント・システム)、分散電源(熱源供給)、モビリティ、O2/オゾンHC利用、防災(非常用電源)を挙げている。

(*)副生水素……石油製品や鉄鋼等の生産工程で、副次的に発生する水素のこと。