同日の上院外交委員会では最大3000mに達する滑走路が造られていることを示す写真が公表された。D・ラッセル国務次官補は「水面下の岩礁や浅瀬に砂を積み上げても領有権主張の助けにはならない」と述べ、D・シア国防次官補は「中国の行為は事故や誤算のリスクを増大させる」と批判した。

 J・ケリー国務長官は5月16日、北京で王毅外相と会談した際「埋立ての速さと範囲が懸念を招いている」と語ったが、王毅外相は「主権の範囲内の問題だ」と反論した。27日にはカーター国防長官が中国に工事の即時中止を求め、EUのD・トゥスク首脳会議議長(大統領に相当、前ポーランド首相)も26日、朝日新聞のインタビューで「海上で建設工事は問題解決を一層困難にする」と中国非難に加わった。30日からシンガポールで開かれたシンポジウム「アジア安全保障会議」(英国の国際戦略研究所主催)でも、中谷元防衛相やカーター米国防長官、アンドリュース豪国防相らが、中国の埋立てを批判した。

 これに対し、出席していた中国軍副参謀総長・孫建国海軍上将は従来どおり「中国の主権の範囲内」を主張し「軍事上の必要を満たすためだ」と中止要請をはねつけた。中国は5月26日に発表した国防白書では南シナ海で「地域外の国が介入し、中国に対し頻繁な偵察活動を続けている」と米国を非難し「海上での軍事闘争への準備」を優先する方針を明らかにした。

 習近平主席は一昨年6月、オバマ大統領との2日間の会談の際「不衝突、不対抗、相互尊重、合作共栄」の新型大国関係を提唱し、オバマ大統領も後日同意を表明したが、今回の中国の国防白書は「海上の軍事闘争」を唱えているから正反対だ。米国も埋立ての「即時中止」を求めた以上、拳をおろすのは容易ではなく、少なくとも当面、米中は衝突コースに入った形勢だ。

 米国が「水面下の岩礁を埋立てても領有権は認めれらない」というのは正しい。ファイアリー・クロス礁は満潮時には水面下に没する「干出岩」だ。沖ノ鳥島のように満潮でも少し海面上に出ていれば周辺の海域は領海となる。もし人が住めるか又は独自の生活を維持できるなら「島」として周辺200海里の排他的経済水域を設定できる。だが沈んでしまう岩は海底の一部だから、その上を埋立てても「人工島」でしかない。海洋法条約60条8項では「人工島及び構築物はそれ自体の領海を有しない」と定めている。その上を外国機が飛ぼうが船が接近しようが全く自由だ。

 5月20日にCNN取材班を乗せて嘉手納基地から出た米海軍の哨戒機P-8Aは、トラブルを避けて12海里以内には入らなかったが、中国海軍から「貴機は軍事区域に接近しつつある。退去せよ」との警告を受けたという。その法的根拠は無いと考えられる。