積極M&Aに潜むリスク
経営陣にも責任はある

 LIXILの成長戦略は順調に進んでいると見られていた。グローエの買収を通して手に入れたジョウユウは、中国国内に4000店以上の販売網を持つ、中国最大の衛生陶器メーカーだ。LIXILは、高級ゾーンをグローエ、中級ゾーンをアメリカン・スタンダードとLIXIL、ローエンドゾーンをジョウユウのブランドとして差別化する戦略だったようだ。

 ところが、そのジョウユウの創業者一族は、われわれの想像を超えるしたたか者だった。多額の簿外の債務があり、しかも不正会計処理を行うことで経営の実態を取り繕っていた。

 今年4月、ジョウユウに関して中国の金融機関から督促状が来たという。本社で調べてみると、充分なキャッシュがあるはずで督促が来ることなど考えられなかった。それを不審に思ったLIXIL側が本格的な調査に乗り出すと、不正会計処理が浮かび上がり、債務超過に追い込まれていることが発覚した。

 今回のケースについて、主に二つの点でLIXIL経営陣に責任がある。一つは、M&A案件をまとめる際のデューデリジェンスの問題だ。通常、M&Aを実施する場合には、相手企業の財務内容に問題がないか、専門家を使って詳細に調査する。

 ジョウユウがLIXILにとって子会社の子会社=孫会社になることもあり、その手続きがやや拙速になった可能性は否定できない。さらに厳密なデューデリジェンスを行っていれば、リスクの一部を軽減することができたかもしれない。

 もう一つは、企業経営者のガバナンス問題だ。日本人はどうしても、“性善説”に立って人を信用してしまうことが多い。しかし、今回のように企業経営者の中にもとんでもない人材がいることがある。

 それをLIXILの経営陣は見つけることができなかった。一般的にM&Aに関して、人事権などについては一定程度現地スタッフの裁量を認めても、財務など管理部門の要所はしっかり握っておかなければならない。それができなかったと批判されても仕方がないだろう。