「グローエ買収は世界進出の足がかりになる」と強調した藤森義明社長兼CEO
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 住宅設備最大手のLIXILグループが“公約実現”に向けて着々と動いている。

 市場からは無謀とされた「2015年に海外売上高1兆円」という大目標を掲げ、海外案件の大型M&Aを積極化。9月には独住宅設備機器大手のGROHE(グローエ)を約3800億円で買収、海外売上高が4000億~5000億円程度に押し上げられる見込み。今後は内部成長で同7000億~8000億円程度を目指す計画だ。

 グローエは欧州市場で15%のシェアを握る水栓金具を筆頭に、浴室やトイレを手がける欧州最大の水回りメーカー。優れたデザイン力を武器に高級分野で名をはせる。11年には中国のトイレメーカー、JOYOU(ジョウユウ)を傘下に収め、中国で2ブランドによる事業展開を進めている。

「住生活に関わるすべての製品で、世界で1位、2位のブランドを手に入れた。北米、中国、欧州を中心とした世界基盤を構築した」と胸を張る藤森義明社長兼CEO。

 確かにLIXILは、09年には米大手トイレメーカー、アメリカンスタンダード(アメスタ)のアジア部門を176億円で、11年には欧米でビル外壁事業を手がける伊ペルマスティリーザを608億円で買収。今年8月にはアメスタの北米部門も531億円で手に入れ、海外企業を買いまくってきた。

期限ぎりぎりで買収成立

 だが、今回の案件は一筋縄ではいかなかったようだ。欧州では7月ごろから、ファンドによるグローエの売却報道が相次ぎ、買い手には欧米の優良企業3~5社が候補に挙がっていたが、藤森社長は「一番のライバルはIPO(新規株式公開)だった」と言う。

 ファンドは最後までIPOの選択肢をはずさず、デッドラインが迫る中、時間ぎりぎりでLIXILへの株式売却を決めた。「2年間ずっと交渉してきた。買い手候補がどこかは知らないが、LIXILが金額でわずかに他を上回ったようだ」(藤森社長)。