第一に、IT関連の高付加価値産業を育成することは中国にとって極めて重要な課題となっている。

 第二に、政府は国営の企業・金融機関に改革を促す「触媒効果」をIT業界に期待している。例えば、アリババ系モバイルバンキングとその投資商品であるマネー・マーケット・ファンド(MMF)が消費者から圧倒的な支持を得たことは、銀行業界に衝撃を与えている。

 第三に、就職に失敗して不満を鬱積させている若者が都市部には大勢いるだけに、「敗者復活戦」で勝ち上がってきたマー氏のような存在はイメージ的にも大事だ。

 ところで、北京市の中関村というエリアは近年、同市で経済成長の2割をけん引してきたハイテク産業の中心地だ。そこに昨年、「創業大街」(英語名Inno Way)という通りができた。政府はここをハイテク・ベンチャー・ビジネスのハブにしたがっている。

 通りにある「3W Cafe」は、起業家や投資家の出会いの場として利用されている。店内には成功した中国人起業家の写真が大きく飾られ、壁にはナスダックの推移と、上場中国企業の名が記されるという演出がなされていた。

 5月に李克強首相がここでコーヒーを飲んで、若い起業家と語り合ったシーンを中国主要メディアは大きく報じた。明らかに“官製キャンペーン”なのだが、今年度の大学卒業者数が過去最高の749万人という目先の事情もあり、第二、第三のジャック・マーを育てて、雇用機会を増大させていく必要性を中国政府は感じている。

「創業大街」が成功するか否かは未知数だが、「経営者になりたい」と思う野心家の若者の比率は、中国の方が日本よりもはるかに高いだけに、先行きが注目される。

東短リサーチ代表取締役社長 加藤 出)