麻生太郎首相は10月30日、首相官邸で記者会見し、財政支出5兆円、総事業規模26.9兆円に及ぶ新総合経済対策を発表した。筆者もその会見を生放送で見たが、大筋で言えば、プレゼンテーションは失敗に終わったと思う。
翌31日の朝刊では、日本経済新聞以外の各主要紙5紙の一面の一番大きな見出しは、「3年後に消費税増税」だった。結局、政府・与党としては、景気刺激を印象づけなければならないところで、増税のほうを強く世間に印象付けてしまった。
そもそも経済効果という点から言うと、今財政的に多少刺激するとしても、3年後にそれを取り返しますよというような話をしてしまえばおよそ効果は期待できない。会見の途中で、麻生首相が「経済の状態が悪い時に増税する気はない」と言ったので、覚悟を決めているのかと思ったが、その後で、増税のタイミングについて「3年後にはお願いしたい」と数字を明言してしまった。数字を出さなければまだ良かった。あれだけはっきり言ってしまうと、官僚のカレンダーには、3年後に丸が付くだろうし、なにより印象としてそこだけが妙に具体性を帯び、強烈なイメージを与えた。
麻生首相の気持ちを忖度すれば、「私は、日本経済は全治3年と言っている。3年後には必ず良くなっているとの思いを込めて、敢えて3年後と言う」ということなのだろうが、そうであったとしても、「その時が来たらまたその時に考える」ぐらいは補足しておくべきで、残念ながら、言葉が足りなかった。
ただ30日の会見は、メディアの側もどこか妙だった。経済対策発表の会見なのに、おそらく来ていたのは政治部の記者ばかり。解散・総選挙関連の質問に終始した。会見後のNHKのニュースも政治部の記者が解説に起用された。経済対策の発表なのにどうしたことか。メディアの世界では、政治部が偉いのかも知れないが、経済の話を真面目に伝えないのは困ったことだ。
さて、肝心の中身を見ていくと、柱となっているのは、家計への緊急支援として打ち出された総額で最大2兆円の「生活支援定額給付金」だ。クーポンか現金ですべての世帯に給付する方針で、年度内に実施するという。