「技術供与は負のスパイラル」
“お国のため”に困惑する防衛関連企業

川崎重工神戸に出入りする潜水艦乗員 
Photo:kenichirou Akiyama

 軍事産業といえば、ともすれば巨額の資金が動く“ぼろ儲けビジネス”と思われがちだが、その実情はかくの如きものなのだ。ビジネスとして考えると、とうてい発展性があるとは言い難い。

 にもかかわらず、各社はなぜ防衛産業に関わるのか。

 一つには、収益性は低くとも安定した収益源であることには間違いないからだ。国が相手で取りはぐれのない、“公共事業”とも言える。

 しかし潜水艦に限って見ると、“三川”の2社にとっては、その研究や特殊技術者の雇用・教育コストが莫大で、必ずしも元を取れているわけではない。それでもこれに携わるのは、冒頭の関係者の言葉にあったように「祖業だから」という一点に尽きる。

 こうした状況を知ってか知らずか、防衛省・自衛隊の調達部門の担当者たちは、国内大手が防衛産業に携わるのは、ひとえに「お国のためという意識だと心得ている」と口を揃える。

「オーストラリアへの技術供与は、民間造船会社による防衛参加と言ってもいい。日本が技術協力する各国は日・米・英を主軸とする安全保障の傘下にある。それを諸外国に示すことは、対峙する各国への牽制の効果も大きい」(調達畑の元海将補)

 だが、防衛産業大手の役員らは、防衛省・自衛隊幹部らが言う「お国のためという意識」に困惑の様子を隠さない。

 防衛省・自衛隊関係者のなかには、「技術供与ビジネスが盛んになれば、収益性が低い防衛関連の仕事も各社は積極的に請けてくれるだろう」(前出の元海将補)との見方もあるが、防衛産業側はこれが、自らの首を絞めることになりかねないと懸念する。

「潜水艦に限らず、技術供与の形で諸外国に日本の技術を供与するのなら、そのうち諸外国経由で国内外の軍事産業各社にもこれら技術が流出する可能性もある。その結果、もし世界のどこででも、安価で高い技術の兵器の作成が可能となれば、防衛産業はますます収益性が低くなる。負のスパイラルだ」(防衛産業大手役員)

 防衛省・自衛隊の思惑と防衛産業とのそれには大きな隔たりがあるようだ。安全保障という目的を達成する上でも、「産業」「ビジネス」としての現実を、もっと考える必要があるのではないか。