先の衆議院総選挙で民主党が勝利し、にわかに現実のものとなりつつある「高速道路無料化」。民主党の主要な政策の1つとして大きな注目を集めており、経済効果なども期待される反面、財源、渋滞、環境などの問題もすでに指摘されている。そこで、高速道路無料化に関わる5つの課題についてメリットとデメリットを考察し、この政策の意義を徹底検証してみたい。(取材・文/プレスラボ 澤田竹洋)
民主党マニフェストの目玉政策
「高速道路無料化」は是か非か?
今年9月16日、衆議院選挙での民主党圧勝を受け、鳩山由紀夫代表が第93代内閣総理大臣に就任した。八ッ場ダムの開発中止を宣言するなど、新政権は早くもマニフェストの実施に動き出している。
その新政権の取り組みの中でも、国民にひときわ注目されている政策がある。「高速道路無料化」だ。2010年度から段階的に実施するとされている。
高速道路無料化では、流通コストの引き下げや地域経済の活性化など、大きな経済効果が見込まれている。一方、自動車以外の交通機関から反発が出ているほか、高速道路を利用しないユーザーからは不公平感も噴出している。まさに、賛否両論が入り混じっているのだ。
そこでこの際、高速道路無料化の是非を徹底検証してみることにしよう。議論の的となっている「財源」「受益者負担の原則」「渋滞の深刻化」「経済効果」「環境問題」といった5つのポイントをピックアップし、それぞれについてのメリットとデメリットを詳しく見ていく。
果たして、長年ムダが指摘されてきた道路行政を見直す絶好の機会となるのか、それとも「単なる聞こえのいい政策」として失敗に終わってしまうのだろうか。
巨額借金に加えて料金収入がゼロに
高速道路の「財源」をどう確保する?
まず気になるのは、「財源」である。そもそも料金収入がなくなったとき、高速道路の運営に必要な費用をどのように捻出するのだろうか。
05年10月の民営化で生まれた道路関係4公団は、建設などにかかった有利子負債と高速道路資産を日本高速道路保有・債務返済機構に付け替えている。その有利子負債の残高は、08年度末で31兆円にも及ぶ。