行き詰まりを感じる経営者の視点が変わるきっかけ、企業再生のきっかけとなる「スイッチ」の見つけ方を、経営コンサルティングのプロフェッショナル集団・カートサーモンの塚原義章氏が解説する第4回。今回は技術力や品質に裏打ちされたロングセラー商品を誇りすぎるあまり、次の成長の絵が描けなくなっている消費財メーカーの改革のスイッチだ。
移り変わりが激しい消費者ニーズと常に向き合わなければならない消費財メーカーは、商品開発サイクルや競合他社との開発スピード、コスト競争などが成長のカギになる。そうした環境の下で新しい商品を開発していく一方、一過性のブームではなく、ブランドを育て、長く消費者に支持されるものを作る必要もある。
だが、強いブランドを作り上げ、いったん市場を創造してしまった消費財の難しいところは、ブランドを維持しながら時代の変化にどう対応させていけるか、という点だ。しかも、技術力を持ち、質にこだわった商品を開発して成功してきた企業ほど、その変化への対応が遅れがちになる。
今回は、ロングセラーを生み出しているものの、今以上の存在になることがむずかしくなっているある食品の消費財メーカーが抱える課題を例に、息長く支持され続ける商品開発に必要な「スイッチ」を考えてみたい。
数十年パッケージを変えない
「鈍感さ」
カート・サーモン・ユーエスインク日本支社パートナー/ハードライン(日用品製造及び小売)を総括。コンサルタントとしての約20年のキャリアを通じ、小売・消費財・コンシューマ領域における大手企業の成長戦略、商品戦略、チャネル戦略、プライシング戦略、商品プロセス改革、マーケティング部門改革、消費者インサイト、海外M&Aなどを支援。
独自の商品開発の視点を持ち、ニッチな市場開拓の上手さに定評がある、ある食品メーカーでは、ロングセラー商品を数々生み出している。特徴は独自の研究開発技術をベースに、健康にこだわったメッセージを商品に込める点。味の美味しさだけではなく、その機能性や品質への安心感を価値として提供し、消費者に支持されてきた。
他社にない独自の技術や、ニッチ市場を開拓できるユニークな商品開発の視点を持っているということは本来、大きな強みになる。
だが、一方で、技術力をベースにした「独自路線」へのこだわりを持ちすぎるあまり視野が狭くなってしまい、業界全体で起こっている当たり前の変化に対して鈍感になってしまうことも多い。それが次の成長を描くことを妨げ、一転して弱みになってしまう。
この企業もロングセラー商品を柱に事業を続けているものの、それぞれの商品の進化した姿がどれにも見えてこないことが課題となっていた。それはなぜか紐解いて見てみると、変化に対する鈍感な部分が見えてきた。
例えば、パッケージが商品誕生当初からほとんど変わらない。消費財のパッケージというのは、一見変わらないように見えても、時代の変化に伴って「開けやすい」「持ち運びやすい」「ゴミが出にくい」など実は数々の工夫が凝らされてきている部分だ。