女性一般職社員の職場における影響力には侮れぬものがあり、新入社員が入ってくると管理職が「いろいろ教えてやってくれ」と頼むようなことは珍しくありませんでした。業務そのものについては上司や先輩が主に指導しますが、社内の事務的な諸手続きなどは、もっぱら女性一般職社員が指導役を務めました。

 実は、対若手指導だけではなく、女性社員たちの情報網は、社内の正規な意思決定ラインにも随所で関わっていました。社員の配属や異動について、人事サイドがこのオーソライズはされていないけれども、だれもがその存在を知っている社内情報ネットワークから情報を得て、参考にすることも普通にあったのです。

 その社内情報ネットワークが、いまは多くの会社で機能を停止するか、不活性になりました。

 いま、若手が慣れない仕事に行き詰ったとき、遠慮なくため息をつき、弱音を吐ける相手・機会は職場の中では少なくなったのではないでしょうか。

 上司や先輩は、いくら親身になってくれても、上下関係の上の位にあります。その「階級差」を意識することなく、会話することは困難です。

 メンター制度をうまく運用している会社であれば、かつての「給湯室の会話」に近い役割を実現しえているかもしれませんが、それはごく少数でしょう。

 女性一般職社員による情報ネットワークの消滅、もしくは不活性化は、社内の「横」「斜め」の交流を希薄にしました。いまでは正規の指揮命令系統、すなわち「縦」の関係が際立っています。「縦」の関係には、逃げ場がありません。しかも、抑圧的です。

 もちろん、ごく親しい上下関係を育むことは不可能ではありませんし、同期のつながりが強い会社もあるでしょう。しかし、「給湯室の会話」のような、鎧をはずせる時間と空間が、ほとんどなくなったことは確かなのではないでしょうか。

「職場環境の人間化」で
OJTが再活性化する

 会社は業務機能を最優先にスリム化し、親密さを確保するゆとりをなくしました。オーソライズはされていないけれども、だれもがその存在を知っている社内情報ネットワークがなくなったことは、しばしば指摘される「OJTの機能低下」と無関係ではないと思います。「ギスギスした職場」になった理由の一端もここにありそうです。