
45年の歴史を持つガンダムは老舗事業といってもよいが、にもかかわらずここ7年で売上高が約3倍に膨らむ超急成長事業でもある。バンダイナムコホールディングスの屋台骨である事業だが、その強さの秘密とアキレス腱はどこにあるのか。特集『ガンダム・ジークアクスの舞台裏』(全10回予定)の#4では、財務諸表をアナリストと読み解いた。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
1作目放映時はガンダムとは無関係だったバンダイ
45年を経てグループ最強IPに成長した理由とは
「ええぃ、連邦軍のモビルスーツは化け物か!」
1979年テレビ放映の1作目の「機動戦士ガンダム」でシャア・アズナブルがアムロ・レイの搭乗するガンダムに対して発したこのせりふ。実はこれはガンダムというIP(知的財産)全体に対しても、あらゆる意味で当てはまる表現である。
日本で有数の巨大・長寿コンテンツであるガンダム。原作の富野由悠季監督、メカニックデザイナーの大河原邦男氏、キャラクターデザイナー・作画監督の安彦良和氏らが手塚治虫の虫プロダクションの系譜を引くアニメスタジオ、サンライズ(現バンダイナムコフィルムワークス)で制作を行ってきたことは広く知られている。
また、バンダイ(現バンダイナムコホールディングス〈HD〉)が80年7月に発売したガンダムプラモデル(ガンプラ)は、当時はわずか数年間で1000万個以上を売り、ガンダムの人気を大きく決定付ける役割を果たした。地上波テレビでキャラクターの人気を高め、関連商品を販売することでマネタイズする、という今日のコンテンツビジネスの定番フローの成功例の先駆けとなった。
だが実は、機動戦士ガンダムの放映中にガンダム玩具の販売を行っていたのは番組スポンサーでもあったクローバーだった。同社の合金玩具は売れず、同社は後に経営破綻してしまう。視聴率の低迷もあって本来の話数を大幅に短縮して機動戦士ガンダムは80年1月に打ち切られる。ところが放送終了後アニメ誌の特集や再放送でじわじわと人気となり、これに注目したバンダイが半年後にガンプラを発売した、という経緯がある。
このように機動戦士ガンダムの放映中はガンダムとは無関係だったバンダイ。ガンダムが現在の「化け物」IPとなり、バンダイナムコHDの極太の屋台骨ともなるまでに、何があったのか。そして、ガンダムは構造的な強さの面ではポケットモンスター(ポケモン)やDRAGON BALL、ONE PIECEなどの有力IPを上回る、日本のコンテンツビジネスの中で最強ともいえるビジネスモデルを有している。世界でも同種のモデルを確立しているライバルは米ウォルト・ディズニーくらいしか存在しないのだ。
いったいなぜここまで強くなったのか。そしてバンダイナムコHDの中でも断トツに極太の屋台骨であるガンダムビジネスにアキレス腱はないのか。財務分析とアナリスト分析も交えて次ページでじっくり見ていこう。