7月24日、JR土浦駅(茨城県)の駅ビル「ペルチ土浦」がオープンした。イオングループのデベロッパー企業であるイオンモール(千葉県/村上教行社長)が、東日本旅客鉄道(以下、JR東日本:東京都/清野智社長)からプロパティ・マネジメント(商業施設のテナントの誘致や管理)を受託したものだ。イオンモールにとって駅ビル事業は初挑戦。成長戦略を担う、新たな柱に育つか。(取材・文/「チェーンストアエイジ」大木戸歩)
まずは駅ビル運営
ノウハウを構築
イオン(千葉県/岡田元也社長)とJR東日本が、包括的業務提携契約を結んだのは2005年12月。これまでにも電子マネーなどの分野で協業してきた。JR東日本グループの駅ビルの運営を受託するのは、イオングループにとって今回が初めてのケースだ。
イオンモールの本来の得意分野は、郊外立地で広域商圏から集客を図る大型ショッピングセンター(SC)の開発や運営だ。駅ビル事業は未知の領域となる。今後、新たな駅ビル事業を受託する計画については「現在のところ未定」(イオンモール広報)で、まずは「ペルチ土浦」で駅ビル運営ノウハウの獲得をめざす。
イオンモールがJR土浦駅の駅ビル「ペルチ土浦」のプロパティ・マネジメントに挑戦した |
ファミリー層が集まる郊外型SCとは違い、駅ビルのターゲットは駅の乗降客だ。JR土浦駅の1日の平均乗降客数は、およそ3万5000人。中でも大半を占めるのが通学のために電車を利用する高校生だという。そのためペルチ土浦は、女子高校生をターゲットにした専門店の誘致を強化している。また通勤客の朝食需要に配慮し、フードコートは朝7時からの営業とした。約60の専門店のうち2割をイオングループの専門店が占める。売場面積7600平方メートルで、年商60億円が目標だ。
土浦駅周辺には今年5月、イオンリテール(千葉県/村井正平社長)が商業施設面積約7万9000平方メートルのイオン土浦ショッピングセンターを開業しており、グループ内での競合となるが、「駅ビルと郊外型SCは、客層や来店動機が異なるため、差別化が可能」(イオンモール)としている。
京都駅前の大型施設も
受注の方向で検討中
ペルチ土浦に続く物件としては、京都駅前に開業予定の大型商業施設について、施工主の清水建設等と「プロパティ・マネジメント事業について(イオンモールに委託する方向で)話し合いを進めている」(清水建設広報)という。
同物件は、延床面積15万2199平方メートル、売場面積4万5200平方メートルと、京都市内の商業施設としては最大規模。当初はジョイント・コーポレーション(東京都/東海林義信社長)がプロパティ・マネジメントを請け負う予定だったが、同社が今年5月に経営破たんしたため、清水建設らが新しい運営主体を探していた。
これまでイオングループは郊外立地への大型SCを出店政策の柱とし、年間10店舗ペースでの出店を続けてきた。だが、改正まちづくり三法の影響で大型店の出店が難しくなったことに加え、昨年の建設資材の高騰で新規出店投資の採算性が悪化したことや、不動産流動化市場の低迷といった背景もあり、今期は大型店の出店を抑えて都市部への小型店に出店の軸足をシフトしている。
イオンモールも今期から始まった中期経営計画の中で、今後3年間の大型SCの出店は国内7SC、中国2SCと開発物件を厳選する方針を打ち出している。大型店の新規出店が難しくなる中、グループ企業の既存GMS増床や、プロパティ・マネジメントといった「活性化ビジネス」を成長戦略のひとつの柱に育てていく考えだ。
「チェーンストアエイジ」9月15日号 好評発売中!
『チェーンストアエイジ』誌9月15日号の特集は、恒例企画「日本の小売業1000社ランキング」です。
日本の小売業(上場・非上場)も含めた売上高1000社(単体)ランキングを掲載しています。本年度の1位はセブン-イレブン・ジャパン(東京都)、2位はヤマダ電機(群馬県)、3位はローソン(東京都)となっており、1000位は、やまか(神奈川県)でした。特徴的なことは、コンビニエンスストアのシェアが百貨店を上回ったこと。またローソンがイトーヨーカ堂(東京都)を売上で追い抜いたことです。
特集では「業態別ランキング」「地域別ランキング」も併せて掲載しています。
また巻頭インタビューとして、日本スーパーマーケット協会会長の川野幸夫さんに食品スーパーマーケット市場を展望していただいています。
ぜひご一読くださいませ。
小売・サービス・流通業界がわかるビジネス情報サイト DFオンライン