週2日、半年で、学費が600万円というから、日本一の高さである。しかも、半年後に手にできるのは学位でも修士号でもなく、単なる修了証――。
「東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム(EMP)」は、大学側の発表によれば、「将来の組織幹部、特にトップになる可能性のある40代の優秀な人材」を想定している。
定員は25人で、これ以上の人数になると「議論が成立しなくなる。だから学費も高くなる」(EMPを担当する山田興一・東京大学理事)。カリキュラムは、宗教、生命科学、地球環境といった幅広い分野に及ぶ。
「なぜ東大にビジネススクールがないのか」という企業からの要望に応えるかたちで1年かけてまとめられたEMPのコンセプトは、米国のビジネススクールのように細分化・専門化された学問ではなく、統合化された幅広い学問を提供することにある。今後のリーダーに求められる課題設定能力を身につけさせるのが狙いだ。カネ儲けのための経営理論を詰め込むのでなく、国家に有用な人材を育成するのが、東大流「MBA」(経営学修士)の真骨頂なのである。
「東大のなかでもトップクラスの教授陣や学生たちとの人的ネットワークができる」(山田理事)ことを考えれば、半年600万円の学費も高くはないということか。確かに企業が実施している海外派遣留学と比べればはるかに安い。
EMPは、少なくとも「天下の東大」にしかできないプログラムであることは間違いない。開講は今年10月。願書締め切りは7月22日である。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 千野信浩)