開業当初の朝のクラスは閑古鳥
ようやく時代が追い付いた

 土木、外食、コンサルティング会社……。橋本はこれまで複数の会社を渡ってきたが、どこでも心からやりがいを感じたことはなかった。ベンチャーバンクに入社した後も、自分が心底情熱を傾けられる事業を探し続けていた。その金の卵が、このマンハッタンでようやく見つかったのだ。

 これだ、これを日本でやりたい。自分と同じように運動が続かなかった人たちも、これなら習慣にできるはず――。橋本は帰国すると早速ベンチャーバンクの鷲見貴彦社長に、バイクエクササイズ事業の立ち上げを直訴し、承諾を得た。さらに、日本でゼロからインストラクターを育成し、レッスンプログラムを作り上げていった。そして、帰国からおよそ9ヵ月を経た2012年6月、銀座に日本初のバイクエクササイズ専門スタジオ「FEELCYCLE(フィールサイクル)」をオープンさせた。

 銀座店は朝から夜まで1コマ45分のレッスンを提供していたが、オープン当初は36台のバイクに対して、生徒が10人だったり、時間帯によっては1人だったりすることもあった。特に苦戦したのが朝7時からのレッスンだ。「生徒が集まらないなら、朝は止めてしまった方がいい」。そんな声も社内から上がった。

 だが、橋本は動じなかった。「マンハッタンのビジネスマンと同じように、朝運動して出社する習慣を広めることが、このビジネスのコンセプトの一つでもあったから。銀座店は地下にありますが、運動後、スーツに着替えて階段を上がっていくと、青空が目に飛び込み、とても爽やかな気分の中で、さあ、会社に行くぞという前向きな気分になれます。これを多くの人に体感してもらうまでは、止めるわけにはいかない」。

 そのうち全く新しいエクササイズとしてマスメディアでも話題に上り、口コミにも乗って、どのレッスンもバイクが満遍なく埋まるようになった。特に著しく伸びたのが朝7時からのレッスンだ。

 13年頃から、日本でも朝に様々な活動や運動をしてから出社するライフスタイルが若者の間で流行り始め、その時流にも後押しされた。いち早く朝の運動に目をつけた橋本のコンセプトに、ようやく時代が追い付いてきたとも言えるだろう。気がつけば、銀座店の朝のレッスンは毎回全てのバイクが埋まるようになった。