日本の大学ではアジア系留学生の存在感が日に日に増している。今まで50万人のビジネスパーソンの「市場価値」を上げてきたキャリアコンサルタントの藤田聰氏によると、「アジア系留学生と日本人学生の違いに成長のヒントが隠れている」という。

アジア系留学生の
圧倒的な存在感

ハングリーなアジア系留学生が<br />脱力系日本人学生を駆逐する

 日本の大学には、年々アジア系留学生が増えている。私は都内の総合大学でリーダーシップ論を教えているので、それを実感する。特に積極的なのは中国人学生だ。

 大学の講義では、留学生の存在感が異常なまでに高い。コンサートで言うと高額なアリーナ席に相当する中央前列には彼らしかいない。決して遅刻することなく最前列に座り、真剣なまなざしで私を凝視し、どんどん意見や質問をぶつけてくる。

 全体の9割を占める日本人学生はどうかというと、指名されるのを恐れ、後方に集中している。豊かさの代償なのか、往々にして大人しい。講座が終わったらそそくさと帰り、控室に質問に来ることもない。肉食動物と草食動物ほどの違いすら感じる。

「どんな組織でも優秀な上位20%、凡庸な中位60%、ダメな下位20%に分けられる」という「2:6:2の法則」が知られているが、大学の講義では「1:9の法則」が適用されているようだ。超優秀なアジア系留学生1割がそうでない日本人学生9割を圧倒している。しかも差は広がっていく一方だ。このままいくと、いずれ職場でも「1:9の法則」が適用され、9割の日本人が1割のアジア系ビジネスパーソンに駆逐されるのではないか、と不安を覚えてしまうほどである。

上位1割の優秀な人になる方法

 この超格差社会で日本人学生が生き残るにはどうしたらいいだろうか。私なりに上位1割と下位9割の学生を比較してみた。主に次の4点が違いとして挙げられる。この点を克服すれば、下位から脱出することができるだろう。

 第一に挙げられるのが、自分のビジョンや夢を明確に持っているかどうかだ。アジア系留学生はだいたい、親しくなると「将来は起業して一族を養いたい」「上場して大金持ちになりたい」と熱く夢を語りだす。留学している時点で、みなかなりのエリートであるのは間違いない。親族の期待を一身に受け、壮絶なプレッシャーに打ち勝つべく、鮮明な成功イメージを持っているようだ。理想の実現に向けて、一心不乱に努力している人は総じて優秀である。日本人にもいるにはいるが、圧倒的に数が少ない。

 第二に、夢を持った人と付き合っているかどうか。周りの留学生も同様にビジョンを持っていることが多い。「朱に交われば赤くなる」ということわざがあるとおり、どうしても人は友人の影響を受ける。優秀な人同士で付き合うことで、彼らの意識はさらに高くなる。

 第三に、メンター(師匠)がいるかどうか。文化の違いなのかどうかわからないが、皆、講義が終わると控室に押し寄せ、講師を質問攻めにしてくる。中には「私の師匠になってください」と言い、慕ってくる人もいる。人生経験が豊富なメンターにつけば、それだけ成長が速くなる。

 最後に、謙虚に学び続けているかどうか。とても優秀なのに、彼ら留学生は卑下と言えるほど謙虚である。成功イメージと現在の自分を比べて、まだまだ努力が足りないということを痛切に感じている。理想と現実のギャップをどう埋めていくかを常に意識している人は、成長しやすい。

 以上4点が、私が考える「ハングリーなアジア系留学生」と「脱力系日本人学生」の違いだ。外国人力士が活躍する大相撲と似ている。学生に限らず、若手ビジネスパーソンにもそのまま当てはまる。「自分にはハングリーさが足りない」と思う人はぜひ参考にしていただきたい。