タバコ、遺伝、肥満……さまざまな要因が取りざたされる発がんのメカニズム。実は、私たちが普段何気なく病院で行っている「レントゲン検査」が、日本人の発がん理由の4.4%を占めているとしたら……。『「先生が患者ならどうします?」医師が自分のために選ぶクスリ・治療法』の著者であり、医学博士の岡田正彦氏にその実態をうかがいました。

レントゲン検査を強制するのは
憲法違反?

 がんは遺伝する、と思っていませんか?
 遺伝するがんも確かにありますが、せいぜい全体の5パーセントくらいです。ほとんどのがんは、環境中、または生活習慣にその原因を見出すことができます。原因は、現時点で7割ほどが明らかになっていますが、そのランキングの第4位が、なんとレントゲン検査による放射線被ばくなのです。

 世界中の先進国を対象に行われた実態調査によれば、日本に限り、がんによる全死亡数のうち4.4パーセントがレントゲン検査によるものだ、と断定されています。
 なぜ日本限定かといえば、レントゲン検査の件数が他の先進国に比べて圧倒的に多いからです。CTの稼働台数が他の国々に比べて非常に多く、第2位を2倍以上も引き離しているという事実もあり、間違いはないでしょう。

 この意味で気になるのは、日本ですべてのサラリーマンに課せられている定期健診です。メタボ健診と兼ねて行われることも多いのですが、腹囲、血液検査、検尿、心電図などの検査とともに、胸部レントゲン検査が必須となっています。
 連載第1回目ですでに紹介したとおり、定期健診を受けないと雇用者(会社)が法律で罰せられる仕組みになっていて、実質的に強制されていることと同じなのです。
 このような法律は外国にはありません。

 過去、この法律を改定するチャンスは何度かあったようですが、国が招集した専門家会議で、健診業界の代表が、レントゲン検査を存続させるため必死になって低レベルの発言を繰り返すなど、あきれた実態も明らかにされています。
 日本国憲法には、『すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する』と書いてあります。しかし、きわめて有害、かつ何ら利益を生むことのないレントゲン検査を国民に強制しているのは、重大な憲法違反であると僕は思っています。