レントゲンでがんになるかどうかは、
宝くじに当たるか当たらないかと同じ?
ある講演会で、僕の話が終わったあと、一人のご婦人から、こんな質問を受けました。
「私の子どもが、医師に勧められてCT検査を2回も受けてしまいました。大丈夫でしょうか?」
発がんの仕組みは複雑ですが、原因が作用してから、がん細胞が発生するまでの出来事は、比較的短時間に終了します(正確な時間は不明)。その際にがん細胞が発生せずにすんだのであれば、危機は完全に去ったことになり、あとでがんになることはありません。
がんになる確率は、発がん原因に暴露した回数(たとえばレントゲン検査の回数)に比例して高まると考えればよいでしょう。
その状況は、ちょうど宝くじを買う場合に似ていて、何回も繰り返し買っている人ほど、一生涯のうちに当たるチャンスも大きくなるのと一緒です。
つまり質問にあったように、CT検査を2回受けた直後にがん細胞が発生していなければ、放射線被ばくを受けたことは忘れてしまって構わないことになります。ただし、がんになったかどうかは、潜伏期をすぎたあとでなければわかりませんから、「あとあと大丈夫か?」という質問には誰も答えられないのです。
(本連載は、『「先生が患者ならどうします?」医師が自分のために選ぶクスリ・治療法』の記事に、一部加筆したものです)