1月24日付の日経新聞が、一面トップで、政府が銀行以外の一般企業にも公的資金を使って資本注入する制度を創設する方針だと伝えていた。記事の見出しを見た時は、何かの冗談か、せいぜい観測記事だろうと思ったが、政府は大真面目に検討しているようだ。

 報道によると、今年度の第2次補正予算案にある日本政策投資銀行を通じた1兆円の低利融資枠を企業の資本支援(議決権のない優先株の引き受け)にも使えるようにするらしい。具体的には、関連産業のすそ野が広く、経営破綻した場合、地元経済への悪影響が大きいとみられる地域の中核企業(地方の国会議員には必須の対象だろう)、技術力があり成長性が見込めるのに一時的に資本不足に陥った企業、M&Aに積極的な企業などが支援対象として想定されているという。適用範囲は極めて広い。また、与党内では、経営破綻に備えた安全網がない保険会社や証券会社も新制度の支援対象に含めるべきだとの声もあるようだ。

 筆者の世代は、大学の授業でマルクス経済学を一応受けているが、この新制度は、おぼろげな記憶の中の“マル経”で言うところの、「金融資本主義」から「国家独占資本主義」への移行という話をなんとなく想起させる。

 アメリカ政府によるビッグスリー支援やフランスの政府系ファンドによる企業への資本支援など、銀行以外の一般企業にも政府のお金が資本の形で入るという現象が、現在、自由主義を標榜する先進国でも起こっている。日本でも、「100年に一度の危機」(便利すぎるくらい便利な言葉だ)だから、真似しようということか。

 ただ、本当に経済に対して大きな影響を与える企業を救済するとなると、1兆円では足りない。日経の記事も指摘するとおり、数兆円単位の話になるだろうし、そもそも支援対象先も前述の想定に従えば際限なく広がりかねない。筋書きとしては、小さく産んで、どさくさまぎれに実績を作り、将来大きなフレームワークに育てよう、ということではないか。政府の民間への関与を膨れ上がらせかねない制度だけに、どうにも気味が悪い。

 率直に言って、今回の制度も含めて、制度設計上「企業」に求めるものが矛盾しており、整理されていないように感じる。