綱引きにたとえてみましょう。自分と相手が綱の先端にいるとすると、この場合、自分が、綱を引き寄せようと一生懸命になっている状況です。それでは、自分が力を使わずに、綱をたぐり寄せる(ここでは、相手と親しい関係になることを意味する)ためには、どうすればいいでしょうか?

 それは、丁寧に相手との関係を紡いでいくことです。時間をかけながら丁寧に一人ひとりとの関係を紡いでいくのです。

 それはまるで、上質感のあるシルクの糸のような関係性です。繊細であるけれども、輝きをおびていて、切れることなく伸びている、そんなイメージです。その輝きが増すときもあれば、そうでないときもあります。お互いの立場や状況によって、関係性が深まるときもあれば、時には少し離れ、距離を置くこともあり、決して一定ではないのです。

 そのためには、「人との関係が熟すのを待つことができる」という心の余裕をもつことが大切です。人との関係が熟す時期というのは、それぞれ異なりますから、最近疎遠になってきた人や急に距離を感じるようになった人に対して、「離れてしまって寂しい」という感情が湧いてきても、動じないようにしましょう。

 職場で、早急に人間関係を築こうと躍起になっている人をたくさん見てきましたが、逆効果であることが多いように思います。

 以前、こんなことがありました。

 上司や同僚とともに、札幌に1泊2日で出張にいったときのことです。札幌支店長の「せっかく札幌まで来てくれたのだから」という心遣いにより、初日の夜には、親睦会として2次会まで用意されており、札幌支店の社員の人たちとくつろぎながら話をすることができ、上司は大変満足の様子でした。

 その様子をみた札幌支店長は、「札幌に来たらすすきのに行かないと」という更なる心づかいにより、23時をまわっていましたが、「いいところがあるんですよ」と、ある場所へ誘導しました。そこは、すすきのにあるクラブでした。少しすると上司は、「なぜ、知らない人たちと話しをしないといけないんだ」と突然不機嫌になり、礼を尽くしたうえで、ホテルに戻りたいと私に伝えたのです。

 後日談ですが、取り残された札幌支店の3名の上役は、なにがいけなかったのかさっぱりわからず、朝の3時まで頭を抱えていたそうです。翌日、秘書である私に連絡があり、事情を伝えました。

 このように、「役員が札幌に来る機会を最大限に活用したい」という気持ちはよくわかりますが、早急に信頼関係を築こうとした結果、事態が悪化してしまうこともあるのです。信頼関係を急いでつくろうとしない、ということも肝に銘じておいたほうがよさそうです。