一時は相続問題が浮上

 サントリーHDはオーナー企業ならではの悩みも抱えている。創業家が保有する株式の相続問題だ。

 サントリーHDの株式構造は複雑だ。サントリーHDの約9割の株式を寿不動産が保有し、その寿不動産の株式の約63%を創業家が保有している(下図参照)。

 かつて、こんな相続問題が発生したことがあった。10年に佐治信忠会長の叔母に当たる鳥井春子氏が死去した際、寿不動産の保有株式9.21%分の相続税の支払いが生じたのだ。その際は、サントリー音楽財団(現芸術財団)を公益法人化し、株式を寄付するというテクニカルな方法で多額の相続税支払いを回避した。だが、この手段だけでは、相続対策が十分とはいえない。

 そのため、本体上場を契機にして、創業家が持つ寿不動産の一部株式の売却が検討されているもようだ。創業家による複雑な株式構造は見直される方向だ。

 資金調達の要請、相続問題からすれば、本体上場は合理的な選択肢ではある。だが、その一方で、上場ともなれば、株式市場からの厳しい視線に晒されることになる。「やってみなはれ」精神に代表される自由闊達な企業文化は、非上場企業だからこそ育まれてきた。創業家体制から脱し、真のグローバル企業となれるか。経営陣の覚悟が問われる。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 泉 秀一)