しかし、岩上の目論見は破綻した。創業社長は退任するにあたり、水面下でIT系の大手ベンチャー企業(正社員数1800人)に、自社を買ってもらうことを打診していた。この経営者とは、はるか前からつながりがあった。

 岩上などの役員には、その話が相当進んでから伝えられた。それは、相談というものではなく「通告」に近いものだった。

辞める、辞めると言いながら止めない
合併先の新社長にも取り入ったが……

 大手のベンチャー企業は、この会社を吸収合併した。早速役員などを送り込んできた。新しい社長に就任したのは、岩上よりも5歳下の男性だった。ベンチャー企業では執行役員をしていた。教材に関することは理解していないが、20代の頃に銀行に勤務していたこともあり、数字には明るい。

 岩上と同世代の女性社員たちは、こんなエピソードを語る。

「岩上さんは社長になれなかったから、落ち込んでいた。あんな姿は初めて見た。“もう辞めよう”と嘆いていた」

「それを知った創業社長が心配し、新しい社長にお願いをして、専務にしてもらったみたい。岩上さんは、男の動かし方をよく知っている」

 新社長は岩上を専務にした。岩上は創業の頃からこの会社をよく知るだけに、組織を束ねるためには役に立つ女性だった。この時期、岩上は「次はあなた」と新社長に言われていたようだ。それを真に受けて、猛烈に新体制を支えた。

 社内報では、「第2創業期を迎えた今、新体制をみんなでつくり上げよう」と呼びかけた。経済雑誌にも、「会社の顔」として登場するようになった。インタビューでの言葉には、「次期社長」を意識しているかのようなものもあった。

 しかし、思わぬ異変が起きる。ライバルとみなし、蹴落としたはずの男性役員(常務)が、いつしか管理部門や営業部門のトップになったのである。形式上は岩上が専務であり、ナンバー2である。しかし実際は、この男の役員がナンバー2だった。

 退職した管理職によると、男性役員が猛烈な巻き返しを図ったようだ。新社長に、岩上が過去に起こしたトラブルや前任の社長との「関係」などを、ねつ造に近いレベルにまで歪曲して吹き込んだようだ。