統合される側の鬱屈がいきなり爆発!
楽しいはずのクリスマスイベントで凍り付く

「イツモ・ゴクロウサマ」「メリー・クリスマス!」。にこやかで紳士的なスマイルをふりまきながら、外国人社長が社員たちにM&Mチョコレートのテトラパックを投げ渡す――。

 北米の金融機関N社と、N社に統合された日本の保険会社E社。統合後最初のクリスマス当日、北米にあるN社のグローバル本社からエキスパートとして出向してきていたN社日本法人の社長の演出だった。ところが、この心暖まる行為が、E社社員たちの怒りを爆発させた。「チョコレートを投げ渡される屈辱に耐えられない」と。

 なぜ、こんな不可解なことが起きたのだろうか。その背景には、企業統合にありがちな、ボタンの掛け違いがある。それぞれが抱えていた、内心の思いを見てみよう。

N社:「E社の営業プロセスは、N社に比して20年遅れている」。「E社の営業担当者には、設計自在度の高い商品を売るスキルがない」。さらには、「富裕層へアプローチし、高収益を上げることが何よりも優先される。なぜE社はそれがわからないのか?信じられん!」…。

 一方のE社はどうかというと…。

E社:「N社は、日本の保険業界のことが全くわかっていない」。「N社の商品は日本では根付かない。かつて大手保険会社が同様の商品で失敗していることを、N社の幹部はわかっていない」。「日本の保険業界は、個別継続訪問という薄利多売モデルによって成り立っている。富裕層・高収益モデルは、日本の営業職員チャネルの否定だ。けしからん!」

 ただでさえ、統合される側はプライドが傷ついているものだ。統合する側は、そんな傷つきには気づこうともせず、自分たちのやり方を押し付けようとする。多くの統合企業に見られる、こうしたボタンの掛け違いによる鬱屈が、楽しいはずのクリスマスに爆発したのだ。しかし、依然、N社と直接コミュニケーションをとろうとはしない。一方、チョコを笑顔で配ったN社の社長は、これがなぜ問題になったのか全く理解できない。