団塊世代がお墓を購入する時期に差し掛かり、都会ではお墓の販売合戦が過熱し始めている。一方で、お墓に対する考え方そのものが変化しており、売れ筋のお墓は「永代供養墓」という墓だという。
「納骨堂を購入するなら今のうちですよ。将来、東京はお墓が不足するといわれています。価格も上昇するかもしれませんよ。今なら戒名も無料でお付けします」
新聞の折り込みチラシのお墓を見学にいったAさんは、営業マンの強引なトークにうんざりした。最後まで僧侶が顔を見せることはなく、きちんと供養してくれるかは定かでない。あきれ果てて家路を急いだ。
このお墓は、大都市圏に急速に増加している「自動搬送式の納骨堂」というタイプだった。都会の駅近くに立地しており、数階建ての真四角の建物の中に数千基というお墓が入っている。建築費は数十億円掛かることもあり、業者も早期回収しようと営業熱心になりがちだ。
都会では、お墓の販売合戦が過熱している。週末になればお墓の折り込みチラシが入っていないことはない。団塊世代がいよいよ70代に突入し、お墓のニーズが高まることから、「金鉱」を掘り当てにきている。
安さを売りにする業者も
折り込みチラシやインターネット広告で販売中のお墓を見ると、大都市圏におけるお墓のはやりは、「安近短(安い・近い・短い)」の三つのキーワードで説明できる。
何より切実なのは「安さ」だろう。
「価格はお手頃な90万円(ローンもご利用いただけます)」。こんな売り言葉が目立つ。鎌倉新書の調査によれば、お墓の平均価格(永代使用料+墓石価格)は全国で196万円、東京都では257万円であり、誰もが気軽に購入できる金額ではない。地面にお墓石を建てるというオーソドックスなお墓は高額なため人気に陰りがあり、最近はもっと低価格の納骨堂などのお墓の人気が高まっている。
中には3万円程度を支払って、遺骨をゆうパックで送れば、お寺で他の遺骨と合祀してくれるサービスまで登場している。
「近さ」も重要だ。
バブル経済前後の霊園ブーム時には、地価高騰から郊外の霊園が大量に分譲されたが、遠距離であるため通うのがおっくうになり、家の近くにお墓を買い直すという人もでてきている。
さらに現在はお墓も都心回帰をし始めている。人気があるのは「駅から近い施設」(業界関係者)。今やターミナル駅から徒歩数分の場所にお墓ができ始めている。お墓の広さより、立地を優先している。
そして「短さ」にもニーズがある。
従来のお墓は「◯◯家」という家単位のお墓で、子孫が引き継いでいくものだったが、最近は「子供がいない」「お墓を継がせて、子供に負担をかけたくない」という人も多い。そこで、一定期間たったら合祀し、お墓を引き継がなくていい「永代供養墓」が増えている。
時代の移り変わりとともに、お墓の形態も大きく変化していくものだ。ただし、中には時代のあだ花なのか、遺骨をゆうパックで送るといった、非常に滑稽に見えるものもある。あなたはこの変化をどう感じるだろうか。