お墓は遺骨を預かる場所だけに、永遠に存続してもらわなくては困る施設だが、最近はそれが疑わしいお墓がある。昨年8月、東京・三田の龍生院が都内最大級とされる納骨堂「三田霊廟」の販売を始めた。ところが直後、異変は起きていた。(ジャーナリスト・高橋篤史)
三田霊廟に起こった異変とは巨額の根抵当権設定を指す。登記は昨年8月18日付。債権者は食材宅配大手のタイヘイで、極度額は68億円超に上る。実際の借入額は不明だが、収容規模5000基の三田霊廟は現在、1基120万円で販売を行っており、その総収入に匹敵する債務を抱えていることがほぼ確実だ。
そもそも墓地・納骨堂の土地建物が第三者によって権利設定されていること自体あってはならない。国が2000年に出した指針を受け、東京都港区が12年に制定した条例では所有権以外の権利が設定されていないことが許可要件の一つだ。三田霊廟の場合、許可申請は13年10月になされ、許可が下りたのは14年8月上旬。この間、確かに登記簿は真っさらな状態にあったが、直後に突然、巨額債務が現れたことになる。この事態に関し、所管する港区保健所も寝耳に水だったようだ。
主導したのは婿養子
実は不動産業界の裏側では龍生院はいわく付き案件として長年知られてきた。債務膨張は複雑怪奇な経緯と無縁ではない。
高野山真言宗の末寺である龍生院で墓地開発の話が持ち上がったのは04年ごろ。裁判記録や関係者の証言などによると、主導したのはその2年前に住職の娘と結婚し婿養子となった副住職。それまで不動産業などに携わっていた副住職の半生は浮き沈みが激しく、02年3月には破産までしている。