経験がないから無理――その思い込みが、変化の芽を摘んでいませんか。成熟企業を動かすのは、業界の常識に染まった人ではなく、外から来た“異物”かもしれない。あなたの組織は、経験を重視しすぎて未来を逃していないでしょうか。
楽天グループ代表取締役会長兼社長・三木谷浩史氏をはじめ、Google元会長やZoomの創設者も絶賛する世界的ベストセラー『1兆ドル思考 世界一流の成功をもたらす9原則』をもとに解説します。
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経験不足こそ革新の武器
一般企業では、その業界や職務の経験が不足していると、新しいベンチャー事業のリーダーとして招かれることはもちろん、採用自体されない場合が多い。
しかし、虹が出るためには、雨と日差しが欠かせない。異業種出身の幹部など、すべての基準には当てはまらない新しい人材を雇うことが、成熟企業を再び活性化させる鍵になるかもしれない。
石油・ガス業界とレゴブロックとの共通点は何だろうか。
収益の85%を石炭で賄うデンマークの化石燃料企業ドン・エナジー(Dong Energy)は、保守的な成熟産業の典型的な成熟企業だった。
化石燃料価格が下落し、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が同社の信用格付けを引き下げるという強い逆風にさらされていた2012年、取締役会は新CEOとしてヘンリク・ポールセンを迎え入れた。
ポールセンの履歴書は、レゴで担ったグローバルイノベーションやマーケティングといった分野での役割を派手に強調していた。履歴書になかったのは、化石燃料業界での経験だった。
ポールセンのリーダーシップのもと、ドン・エナジーはオーステッドに社名を変え、世界最大の洋上風力発電企業となり、2019年には、その収益の85%を再生可能エネルギーから得るようになっていた。
2020年にポールセンの在任期間が終わる頃には、株主も喝采を送るようになった。オーステッドの時価総額が2倍以上になっていたからだ。
ポールセンの事例は、500社以上を対象に異業種からのCEO起用が長期的な業績に与える影響を研究した、アブ・ジャラルとアレクサンドロス・プレザスの研究結果とぴったり一致する。
研究によると、CEOの継承から5年後の株式リターン、収益性、成長性はいずれも、異業種からCEOを起用した企業の方が高かった。
もし、あなたの会社の採用担当者が、関連する経験を持たない候補者を除外しているなら、候補者の多様性や社内のイノベーションが欠如するのは当然のことだ。
イエール大学のトリスタン・ボテロとメロディー・チャンは、実際のソフトウェアエンジニアリング職の求人情報に対して、2000通を超える架空の履歴書を送った。
学歴、関心、スキルについては同じ内容を記載した。唯一違いをもたせたのが、応募者のスタートアップ創業経験の有無だった。
興味深いことに、企業がスタートアップ創業経験者に対して面接を依頼した割合は、創業未経験者のわずか半分にとどまった。創業未経験者の方がより標準的な経歴を持つように思われたからだ。
これはすべての企業への警鐘にほかならない。
候補者の見た目や話し方、仕事の進め方が組織での活躍の妨げになるなら、企業文化を見直すときだろう。新しいものを生み出すには、新しい仕事のやり方が必要なのだ。
(本記事は『1兆ドル思考 世界一流の成功をもたらす9原則』から一部を抜粋・編集しています)







