各社が入り乱れて、ますます競争が過熱している携帯電話業界。だが、競争の実態は、最大手のNTTドコモから奪ったパイをau(KDDI)とソフトバンクモバイルが取り合っているというほうが正確である。前回に引き続き、今回はドコモの海外戦略に焦点を当て、その強みや課題を探ってみよう。(取材・文/『週刊ダイヤモンド』編集部 池冨 仁)

2010年には世界最速になる
「ピカピカの土管」を生かせるか

NTTドコモ(中)世界最速のインフラを手にする「ザ・携帯電話」が直面する難題

 近年、NTTドコモは、再び海外投資を積極化させている。

 その背景にあるのは、国内は将来的に人口の漸減とともに契約件数が頭打ちになることが見えているからで、これまで以上に国際ビジネスを加速させることが打開策になるとの認識である。

 最近の目玉は、08年にインド最大のタタ財閥傘下の携帯電話会社タタ・テレサービシズ社に対して、NTTドコモとしては最大級の2640億円(26.50%)を投資し、タタ・ドコモを設立した一件である。

 今年6月下旬からGSM(2G。第二世代携帯電話)のサービスを開始しており、順次、インド国内での対象エリアを拡大し続けている。

 インド全体では、向こう3年間に年間で8000万~1億人以上の新規加入者が見込める大爆発市場であり、NTTドコモとしても力が入る。現地で採用したロゴは、インド全土で計16の異なる言語を持ち、識字率が約60%という事情を鑑みて、文字ではなく形で認識してもらう方法を考えた。

 そして、どのような宗教の信者にも受け入れられるべく、同じ形で3種類の色を用意した。赤(ヒンドゥー教)、青(イスラム教)、緑(キリスト教)で、全世界共通のロゴとサービスメニューで進出したグローバル携帯電話会社との差別化を図ろうと考えている。