ビジネス書のパイオニアといえば、このお二人。営業をご専門とする和田裕美さんと、トップマーケターの神田昌典さんの対談は、今回が初となります。前編は、今年で11年目を迎えるロングセラー手帳『和田裕美の営業手帳』をキーワードに、営業成績をどのように伸ばしていくかの秘訣をうかがいました。(取材・構成/両角晴香 撮影/宇佐見利明)
なぜ成約できなかったのか
敗因を追求する
京都府生まれ。作家、営業コンサルタント。人材育成会社「和田裕美事務所」代表。小学生のときから通知表に「もっと積極的にお友だちとお話ししましょう」と書かれ続けたほど引っ込み思案な性格にもかかわらず、上京後は外資系企業の営業職に就く。当初はおどおどして相手の目を見て会話することもままならず、長い間つらく厳しい下積み時代が続いたが、独自の「ファン作り」営業スタイルを構築し、試行錯誤を重ね、徐々にプレゼンしたお客様の98%から契約をもらうまでになる。それによって日本でトップ、世界142ヵ国中2位の成績を収めた。その経験から「考え方」と「行動」で運命はいくらでも変えられるのだと実感し、自分が行っていた思考パターンを「陽転思考」として確立する。執筆活動の他、営業・コミュニケーション・モチベーションアップのための講演、セミナーを国内外で展開している。女性ビジネス書の先駆けとして大きな反響を呼んだ『世界No.2セールスウーマンの「売れる営業」に変わる本』(ダイヤモンド社)がベストセラーになる。ほかに『人生を好転させる「新・陽転思考」』(ポプラ社)、『和田裕美の人に好かれる話し方』(大和書房)など著書多数。最新著作は『成約率98%の秘訣』(かんき出版)。
和田 神田さんは、手帳を使う派ですか?
神田 手帳は使っていないですね。毎年買ってはいるのだけど、残念ながら使いこなせなくて(笑)。「手帳難民」というやつです。
和田 そうですか……。
神田 和田さんが出されているのは、営業マンのために考案された手帳ですよね。
和田 はい。営業が成果を出すためのもので、「営業手帳」とよんでいます。
神田 こうして手に持つと、良いサイズ感ですよね。ハンドバッグサイズなわけでしょう?
和田 さすが! 「会議にいってきます!」と小脇にすっと抱えられるサイズにこだわったんですよね。
神田 この手帳を使うと、営業成績をあげることができるということですか?
和田 いちおうそれを目的に設計したので。一つ例をあげると、数字を管理するときに、字じゃなくて絵(記号)でかいてイメージしやすくしています。その方が右脳で理解できるのです。たとえば、「営業目標」を「○」で表して、契約がとれたら赤丸「●」に塗りつぶします。プロセスも把握しておきたいので、「お会いしたお客さま」にかんしては「△」の旗を書いて、契約がとれたらそれを赤で塗りつぶし、とれなかったら「黒」で塗りつぶす。それを、1年を52週にわけて、「ウィークリー制」で色塗りしていきます。
神田 ぱっと見、赤がたくさんあると調子が良くて、白や黒が目立つと問題ありということですね。
和田 そうなんですよー。この手帳には10人分のデータを書き込めますので、自分だけじゃなく部下の成績も管理できます。黒旗が多い人をみつけたら、「アドバイスしなきゃ」と上司は判断できるわけで、私、営業時代は手帳で部下を管理していたのですよ。
神田 へえ、おもしろいですね。
和田 営業は常に数字に追われているので、「プロセスを見える化」しないことには、「なんで決まらなかったのか」、その理由を考えることなく次のお客様のところにいってしまう。失敗から学び、次に生かせない限りは結果は出ません。
神田 なるほど。
和田 なので、どんなプレゼンをしたときに、お客さまから「No」と言われてしまったのかをちゃんと分析して修正していきます。原因さえわかれば、改善点も明確です。