東京証券取引所が、SBIホールディングスとゴールドマン・サックス証券が手を組んで8月末にスタートさせたSBIジャパンネクスト証券の4000銘柄に及ぶ株式の「私設取引システム」(PTS)に対する警戒感を強めている。

 将来、PTSが大きく成長して東証を経由する取引が減少し手数料収入が減ると、上場審査や取引監視などに多額のコストが必要な取引所は存続が難しくなる恐れがあるというのが、その表向きの理由である。東証の言い分が正しければ、大変な問題だ。PTSはそれほどネガティブな影響を及ぼす黒船なのだろうか。

 「アメリカでは、機関投資家のトレーディングはほとんど取引所外で行われているが、最後のところは(証券会社が持ち込んで)取引所に来る形になっています。(これに対して、)日本の場合は、直接リテールのお客さんを自分のところへ持ってこようという動きですから、(そこのところが)ちょっと違うわけです」――。

 東京証券取引所の斉藤淳社長は8月28日の定例記者会見で、こう発言し、日本国内のPTSに関する強い危機感を顕わにした。

SBI・GS連合の参入で
東証に警戒感

 PTSは、金融システム改革法が1998年に施行され、すべての株式売買を東証や大阪証券取引所といった取引所で行うように義務付けてきた「市場集中義務」が撤廃されたことに伴い、解禁されたものだ。

 カブドットコム証券やマネックス証券が、早くから、取引所の閉じている夜間にサービスを提供してきたものの、現在までのところ、それほど売買が膨らんでおらず、東証が静観してきた経緯がある。