事例で読み解く!経営・ビジネスの深層Photo:Bloomberg/gettyimages

かつて企業への急進的な提案などから煙たがられることも少なくなかったアクティビストだが、近年その存在意義が大きく見直されている。企業にとって“痛いところ”を突く正論を唱える提案が増えており、企業変革を促す契機となっているのだ。連載『事例で読み解く!経営・ビジネスの深層』の本稿では、近年のアクティビストの動向に加えて、具体的な事例としてセブン&アイホールディングスへの提案書の詳細な内容を解説する。実は、アクティビストの作る「紙芝居」は、ファイナンス初学者にとっても勉強になる優れた資料だ。アクティビストは一体どのような点に着目しているのか、ファイナンス視点で解説していこう。(財務戦略アドバイザー/インテグリティ代表取締役 田中慎一)

アクティビストはなぜ増え、
なぜ受け入れられたのか

 日本の株式市場で、近年アクティビストの存在感が増しています。俗に「物言う株主」とも呼ばれますが、上場企業の株式を買い集め、経営陣に対して具体的な要求を突きつける投資家がアクティビストです。

 日本の会社法は、株主の権利をいかに保障するかを追求し、改正を繰り返してきた歴史があります。株主が会社に対して意見を言うことは本来当然の権利であるにもかかわらず、「物言う株主」という表現からは、いかにも歓迎されていない人たちだというバイアスすら感じられます。

 実際、「現金をため込むな(配当や自社株買いで還元しろ)」「不採算部門や不動産を切り離せ」「経営陣を入れ替えろ」といった要求が強まった2000年代の日本では、アクティビストは、まるで勝手に我が家へ踏み込んできた異邦人のように扱われていました。企業、株主、メディアが一丸となって批判した結果、彼らの要求が通ることは少なく、海外アクティビストもわずかなキャピタルゲインを戦果として得たものの、大きなうねりにはならないまま撤退を余儀なくされたのです。

 ところが近年、かつては煙たがられていたアクティビストの提案が、他の株主から歓迎されつつあります。なぜでしょうか。本稿ではアクティビストの提案が受け入れられるようになった背景に加えて、アクティビストの提案書の分析を通じて、彼らが企業に対していかに“もっともな提案”をしているか、その勘所を紹介していきましょう。