“フェアユース規定”の創設が
本格的に検討へ
政府は長い間、“ネット上でのコンテンツ流通の増大”をICT/コンテンツ政策の重要課題として掲げていますが、その実現に向けた対応策として自民党で先行して検討され、これから政府の知財本部でも本格的に検討されようとしているのが、著作権の“フェアユース規定”の創設です。
著作物であるコンテンツを第三者が利用するためには、原則として著作権者の許諾が必要ですが、現行著作権法では“個別の権利制限規定”が置かれ、私的複製などそこに列挙された用途についてのみ許諾が不要とされています。
それだけではネット企業がコンテンツを自由に利用できず、新たなネットサービスの創出が阻害されているとして、米国著作権法にあるような“包括的な権利制限規定”(フェアユース規定)を創設して、著作権者の許諾が不要な範囲を拡大しようという主張です。
フェアユース規定の問題点
しかし、ネット上でのコンテンツの流通の増大というのは政策目標として正しいと言えるものの、その実現の手段としてフェアユース規定が最適と言えるかというと、やはり疑問を感じざるを得ません。フェアユース規定は著作権法上の権利制限のあり方を根本から変えるものだからです。
現行著作権法は、権利制限について個別の規定を設けていることから明らかなように、著作権者の許諾が不要な場合を予め明確にするという事前規制をベースとしています。それに対して、フェアユース規定のような包括的な一般条項は事後規制、即ち許諾が不要な場合を予め限定せず、新たなニーズに対して柔軟に対応できるようにする分、許諾の可否についてトラブルが生じた場合には司法の場で解決するという事後規制がベースとなります。