低所得世帯にとって、小中学校の夏休みは、子どもの食費などの負担が大きくなる時期でもある。家族旅行など、世の中の「あたりまえ」を経験させることも難しい。

今回は、6人の小中学生の子どもを抱えた生活保護シングルマザーの夏休みの様子をレポートする。

DV被害から逃れて1年
母と6人の子どもたちの夏休み

夏休みは親子が長時間一緒にいられる貴重な時間だが、出費は大きくなる

 「何か、することあるんじゃなかった? 宿題の提出日、いつだっけ?」
 「21日」
 「あと何日?」
 「2日」
 「大丈夫?」

 夏休みの宿題を心配する母親のYさん(36歳)に、小3のシン君が「へへへ」と屈託ない笑みを浮かべる。Yさんは、ちょっと怖い顔で「出せなくても知らないからね」と言う。Yさん宅のリビングには、小3~中3の6人の子どもたちが集まっている。子どもたちは、夏休みの宿題に取り組んだり、TVで映画「千と千尋の神隠し」の録画を見たり、思い思いに過ごしている。

 千葉県北東部・A市に住むYさんと6人の子どもたちは、Yさんの元夫によるDV被害から辛くも逃れ、昨夏、現在の住まいに転居した(本連載第14回)。元夫のDVによって職業の継続が困難になり、心身の健康も損なわれたYさんは現在、一家で生活保護を利用して生活している。現在の住まいは、昭和40年代に建てられた木造の一軒家。建物は老朽が目立つものの広く、家族全員が食事できるダイニングキッチンの他に5室がある。女子3人・男子3人の子どもたちの今後の成長を、十分に支えられそうな住環境だ。

「お客様が見えたときにお通しする部屋も、一部屋確保できています」(Yさん)

 その客間でYさんに私がインタビューしていたとき、客間とリビングの間の襖が開き、iPadを手にしたシン君が駆け込んできた。エネルギーの塊のようなシン君は、Yさんと私の周囲を飛び跳ねつつ2回ほど周回した後、押し入れを開けて上段に入り、中から襖を閉じた。客間として用意された何もない部屋は、雨の日の子どもたちの運動の場としても役に立っているようだ。

 家賃は、2015年6月までのA市の住宅扶助(生活保護の家賃補助)上限額と同じ、5万9800円。家主は、支援団体の関係者からYさんと子どもたちの窮状を知らされ、破格の家賃を設定し、一家に提供することにした。しかし2015年7月から、上限額は2000円減額されている。Yさんと支援団体は7月初め、A市に従来通りの特別基準の適用(本連載第15回参照)を申し入れたが、未だ、A市からの回答はない。