2015年7月1日から、生活保護の住宅扶助(家賃補助)引き下げが実施された。特に引き下げ幅が大きいのは多人数世帯。既に行われた生活扶助(生活費)引き下げともども、生活を大きく圧迫されている。
今回は、生活保護に支えられて6人の子どもと暮らすシングルマザーの「これまで」と今後への不安を紹介する。心穏やかに日々を過ごし、子どもたちを育てることは、許されないゼイタクなのだろうか?
住宅扶助引き下げと転居に
不安を募らせる6児の母
2015年7月1日から、生活保護の住宅扶助(家賃補助)引き下げが実施されている。引き下げ幅は、大都市近郊と地方の多人数世帯で特に大きい。東京23区内の単身世帯に対しては、これまでの上限5万3700円が維持されているが、2人世帯では6万9800円から6万4000円へと引き下げ(5800円減)。埼玉県熊谷市では、1人世帯で4万7700円から4万3000円へ(4700円減)、5人世帯では6万2000円から5万6000円へ(6000円減)と引き下げられた。
既に2013年8月から2015年4月にかけて、生活扶助(生活費分)の引き下げが行われており、子どものいる多人数世帯で特に引き下げ幅が大きかった。このことも考えあわせると、
「政府は、子どものいる生活保護世帯に対し、貧困を連鎖させたいのか? 低所得層には、子どもを生ませたり育てさせたりしたくないのか?」
という疑問を抱いてしまう。
千葉県A市に住むYさん(36歳)は、中学3年~小学3年の6人の子どもを抱えたシングルマザーだ。Yさんは、今回の住宅扶助引き下げについて、
「まだ、担当ケースワーカーから聞いていませんし、通知も来ていません」
という。引き下げを知ったのは、さまざまな援助を受けている支援団体を通じてのことだった。現在の家賃は、6月30日までの住宅扶助上限額・5万9800円ギリギリだが、7月1日からはその住宅扶助上限額が2000円引き下げられる。
「ケースワーカーが、突然、うちにやってきて『家賃の安いところに転居してください、そうしなくては保護を打ち切ります』と言うのではないか、と不安になっています」(Yさん)
元夫からのDVで心身ともボロボロにされたYさんは、昨年、生活保護を利用して、子どもたちと一緒に現在の住まいに転居したばかりだ。現在は、精神科で治療を受けながら、家事と育児を辛うじて切り盛りしている。
「子どもたちは父親を失い、生まれ育った街での人とのつながりを失い、大切な友達とも別れることになりました。約1年が経って、やっと、子どもたちも私も、安心して暮らせるようになりました。それなのに……生活保護受給者を精神的に追い込み、苦しめて、その先にあるものは、何なのでしょうか? 希望がありません」(Yさん)