早稲田大学ビジネススクール教授・内田和成氏(左)に、BCGパートナー・平井陽一朗氏が、若手の成長観と人材育成のポイントを伺った
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人はどう育つのか、どう育てるのか――。

前回まで、この連載のテーマについて、私自身の経験や身近な方々のエピソードを通してお伝えしてきました。今回は、ボストン コンサルティング グループ (BCG) の大先輩で、2004年まで4年半、BCGの日本代表を務められた早稲田大学ビジネススクール教授の内田和成さんに、今の学生や若手社会人が持つべき成長観と、人材の採用・育成のポイントを伺いました。対談は、内田さんらしい鮮やかな切れ味の第一声から始まりました。(構成/ダイヤモンド・オンライン編集部 安田有希子)

力をつけたいなら
ブラック企業に行け!?

内田 “力をつけたかったら、世間で言われているブラック企業に行け”というのが私の持論です。

平井 おぉ~!素晴らしい。

うちだ・かずなり
早稲田大学商学学術院教授。東京大学工学部卒業。慶應ビジネススクール修了 (MBA)。日本航空、ボストン コンサルティング グループ (BCG) を経て、現在に至る。2000年6月から 2004年12月までBCG日本代表を務める。ハイテク、情報通信サービス、自動車業界を中心にマーケティング戦略、新規事業戦略、中長期戦略、グローバル戦略の策定、実行支援を数多く経験。2006年度には世界の有力コンサルタント、トップ25人に選出。 2006年4月より現職。

内田 なぜなら、ホワイト企業に入っても、ぬるま湯では人間は成長できないと思うんですよ。でも、少なくとも私の学部の学生で、このアドバイスを聞く奴はゼロなんだけど(笑)。

 それから企業側も「いい人を採用したい」と言うけれど、それも間違い。世間一般でいう“いい人”は結局、偏差値的なものが“いい人”なのであって、どこの会社から見ても“いい人”なわけです。だから、いざ入社した会社に面白くないことがあったら、さっさと辞めてしまうんですよ。

 何が言いたいかというと、企業は本当に“いい人”を採用したいというなら、その会社が大好きでしょうがなくて、会社に骨を埋めたい、という人を採った方がいいと思います。

平井 そうですよね。

内田 もしメーカーなら、一番僻地の工場に、「何月何日の朝9時に来い」と召集をかけて、そこに早く並んだ人から採用すれば、「内定を辞退したい」と言われることがなくなるはずですよね。それなのに企業の人事は「いやいや、やっぱり優秀な学生を採りたいんです!」なんて言うから、結局辞めてしまう人が後を絶たない…というのが私の持論ですね。

平井 なるほど。実は今、BCG社内でも、そういった議論があります。やはり内田さんのようなどちらかというと“昔派”な意見もあれば、「いやいや、今の若者は昔とは違うんだから、それじゃ時代に対応していけないんだよ」と言う人もいて。私はどちらかというと”昔派”ですかね。