「365日24時間死ぬまで働け」
「鼻血を出そうがブッ倒れようが、とにかく一週間全力でやらせる。そうすればその人はもう無理とは口が裂けても言えない」
改めて読み返してみても、理解に苦しむロジックである。
カリスマ創業者の存在感も手伝い、今や映画や書籍、またはインターネットまで、「ブラック企業」は現在の世論を席巻してしまった感がある。
そうしたなかで先月末、また一つの企業が社会の注目を集めた。深夜営業の「ワンオペ」が話題の牛丼チェーン店すき屋だ。この経営母体である株式会社ゼンショーホールディングスに対して、第三者委員会による調査報告書 が提出された。自主的にこうした調査を行った同社には、敬意を表したい。
そしてこの調査報告書には様々な感想が寄せられた。中には、あの大正・昭和初期の労働者達の厳しい労働環境を描いた小林多喜二の小説『蟹工船』にも匹敵する過酷な仕事現場、という声まで挙がった。だから筆者もこれを機会に、同小説に再度目を通した。当時の労働者達を取り巻いた非人間的な労働環境は、現代のインターネットとテクノロジーが人類の未来を拓く平成の新しい時代とは相当逆行する哀歌に一瞬、見える。
外国人に「ブラック企業」を
英語で説明するにはどうすればいいか
さて、こうして日本社会の注目を浴び続ける日本のブラック企業であるが、このブラックな存在を海外の人々に説明するためにはどうしたらいいのだろう。ダイヤモンド・オンラインに目を通す読者の方は、「ブラック企業」だからといって、日本通ではない人に英語で説明する際に”Black Company”などとは言わないでほしい。英語圏の人々にとって「Black Enterprise」と言えば、普通はアフリカ系アメリカ人が経営する企業のことを指す。また「Black Company」と言えば、アメリカで長年続くフィクション小説シリーズのタイトルだ。同じ黒でも意味が異なるので、ご注意を。
海外で似たようなコンセプトはないのかと探せば、「Sweatshop」というものが挙がるかもしれない。スウェットの上下と聞いて読者の方が想像するように、これは主に衣服を縫製加工する工場の劣悪な労働環境のことで、19世紀20世紀初頭のロンドンやニューヨークで社会問題化した。