インターネットの本質は双方向のコミュニケーションにあります。人と人とのつながりと交流が物理的な制約を超えて実現することで、新しい価値やビジネスを生み出していく。ここにインターネットの真の価値があると私は考えています。そして、双方向のコミュニケーションと人間関係の飛躍的な拡大を実現してくれるのが、ネットコミュニティです。
インターネットが日本に上陸して以来、多くのネットコミュニティが生まれてきました。それらとSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)とは何が違うのでしょう? 結論をひとことで言えばバーチャルからリアルへです。
バーチャルという言葉は、ネットコミュニティ内の人間関係がネットを通じて始まることを意味しています。ペット好きのコミュニティに参加して、そこに集うペット仲間と友達になったとしましょう。多くの場合、顔を合わせたこともない同士がお互いに匿名で参加し、ネット上の交流がスタートします。そこからリアルな人間関係に発展するケースもありますが、一生顔を合わせないまま交流が続くケースがほとんどです。リアルな環境の中では出会えなかった気の合う仲間との交流、ここにネットコミュニティの魅力を感じるユーザーがたくさんいたのです。
「SNS」でネットコミュニティが
バーチャルからリアルに
これに対して、mixi(ミクシィ)に代表されるSNSの多くは「既存の参加者からの招待がないと参加できない」というシステムを採用しています。いわゆる招待制です。これまでのネットコミュニティの課題の1つは、コミュニティの匿名性によって、参加者が名前も顔も知らない他人とコミュニケーションすることに不安や不信感を覚えてしまうことにありました。そして、これがネットコミュニティ拡大の阻害要因にもなっていたのです。この不安や不信感を払拭してくれるのが招待制です。けれどもこれは、ネットコミュニティにとって非常に大きな変革を起こしました。
すなわち、コミュニケーションのスタートが、バーチャルな出会いから、リアルな人間関係のオンライン化に移ったのです。SNSとは、リアルな人間関係の人脈ネットワークがオンライン上で展開されているものと思ってください。「匿名だからしゃべれる」から「素性がわかる人だから話せる」「友達の友達だから安心」へ、ネット内のコミュニケーションの重心が大きく転換したのです。