「一歩先を行く」という言葉があります。「一歩先行く営業のツボ」、「一歩先行くプレゼン術」といったフレーズをよく目にします。要は、人よりも先を読んで行動しようということです。

消費者にとって
「一歩先」では遠すぎる

 商品開発や事業開発の現場でも「一歩先」はよく使われます。まあ、一歩といっても1年先なのか、10年先なのか、これは使う人それぞれでしょう。

 長らくマーケティングに携わって多くのヒット商品を見てきました。また、ここ10年はネットビジネスの様々な事業開発を目にする機会に恵まれました。ここで接した多くの事例から学んだことは、「今見えているニーズに応えることが成功の鍵」という、ある意味で当たり前の結論でした。

 世の中には、将来を予測する能力に秀でた人が存在します。予言者というよりは、優れた分析者です。この人たちは5年後の市場を予測して、まったく新しいビジネスモデルを編み出すことができます。他人がまだ見えない未来を見通すわけですから、これこそ「一歩先を行く」です。でも消費者はすぐには追いつきません。これが早すぎる弊害です。

 市場がまだ無いとき、あるいはとても小さいときは、どんなに努力をしても商品は売れません。市場導入のタイミングをはかることは、非常に大切ですね。そしてこれは「一歩先」ではどうも遠すぎるのです。

今あるニーズ
の市場は半歩先

 「一歩先の市場」とは、まだ誰も気づいていない市場です。一方、「半歩先の市場」とは、みんながうすうすその存在をわかっている市場を指しています。そして、成功確率が高いのは、この「半歩先の市場」です。その理由はいくつかあります。

・すでにニーズが存在している
・先行優位のチャンスがある
・消費者にとって理解しやすく受け入れられやすい

 消費者が自分でも気づいていないニーズを満たす商品は、そのニーズが広く顕在化するまで売れません。消費者が自分で気づいているニーズに応えた商品は、「あっ、こういうのが欲しかった」と受け入れられて、市場が拡大します。

 口コミは「あっ、こういうのが欲しかった」のヒント探しに大いに活躍してくれます。言い換えると、口コミはニーズ探索の宝の山なのです。

 ここでは、実際にニーズ探しをしてみたいと思います。テーマは「シニア」です。