いよいよ、白石がトップに立つ。新会長と新社長の間では、すでに密約があると噂される。山瀬を役員に昇格させる、というものだ。

 森が「愛人を役員にするなんて……」と言えば、金田は「いや、愛人ではないですよ。れっきとした“妻”ですよ」と諦め顔で答える。森が「愛人を社外取締役にするなんて……」と返すと、金田は悲しそうに笑い、こう続ける。「相手の女にそんな意識はないですよ。死んだ夫の代わりに、いい金づるを見つけたぐらいに思っているはず」

 森はもはや、この会社に見切りをつけつつある。


タテマエとホンネを見抜け!
「黒い職場」を生き抜く教訓

 今回の社長、専務、人事総務部長などから学ぶべき教訓は、人事権を私物化する者が現れると最悪なことになるというリスクである。特に最高権力者が様々な意味でレベルが低いにもかかわらず、人事権の隅々にまで介入すると、もはや会社とは言い難い状態になる。なぜ、こういう事態になるのか。それを検証したい。

1.少数の人間が人事を私物化する
体制は容易に変えられない

 社員数300人以下の中小規模の企業において、何かの弾みで誕生してしまうのが、サラリーマン経営者による無責任極まりない「長期政権」である。こうした体制の政権の怖いところは、年を追うごとに組織が加速度的に衰弱していくことだが、経営陣がそのことに気がついていないことだ。むしろ、その衰弱化をより速めるようなことをしてしまう。

 そして、権力の中枢に入り込んだ者が見事なまでに勘違いし、恣意・主観に満ちた人事を行う。彼らは競争がない中で役員になり、権限を握ったケースが多い。しかも、社員は次々と辞める。当然、ライバルがいない。つまりは、やりたい放題が可能になる。大企業とはまるで異なった論理で成り立っているのだ。

 こうした職場で働く30代半ばまでくらいの社員で、意識が高く、もっと可能性のある職場で仕事をしたいと願う人は、会社を早く変えたほうがいいのかもしれない。転職が厳しくなった40代であろうとも、新天地で活躍する自信があるならば、辞めることを考えてみていいのかもしれない。