「山元さんのクライアントは、ゆとり世代の育て方に悩んでいますか?」

 企業の人材育成を支援する仕事柄、メディア関係者から世代論や若者像と紐づけるご質問をいただくことがあります。先日も「意識高い系」の若者という言葉が最近注目されていると聞きました。

 数年前からネット上で流行し始め、今年はNHK-BSプレミアムのドラマ「その男、意識高い系。」でも取り上げられました。ダイヤモンド・オンラインの『「意識高い系」の人はなぜあんなにウザイのか?』などの記事も拝見しましたが、意識高い系とは「自分のビジネススキル、経歴を自己演出し、パッと見、スゴイ人に見える人たち」なのだそうです。

 記事を読んだ限りの印象ですが、意識高い系と呼ばれるような若者は、単に大言壮語しているだけでなく、難解なビジネス用語や英語を好んで使うあたり、有名大学出身などの高学歴の方が比較的多く、モチベーションは高いのではないでしょうか。そして、彼らの就職先もグローバル展開をしている大企業、あるいはマスコミで注目される有名ベンチャー企業のような「花形」が多いように思います。

中小企業に“意識高い”系は存在しない!?
笛を吹いても踊らない“意識低い系”が問題

 率直に言うと、中小企業のお手伝いをしている私には、企業がそうした「意識高い系」の育成に悩んでいる実感は全くありません。これは私のクライアント企業の社長の多くも同様ではないかと思います。

 NHKのドラマでは、会計ソフトを販売しているIT企業が舞台でしたが、東京にある一握りの企業で、そうした若手社員が実際いるのかもしれません。しかし、第1回でも書きましたように、六本木ヒルズで世界を相手に商売をする大手企業と、社員数ひとケタの町工場といった職人気質の中小企業では、人材育成の課題も、育成対象となる人材像も全く異なります。

 あえて言い切ってしまうと、業態にもよりますが、地域密着型の中小企業には意識高い系の社員は存在しません。むしろ、実態としてあるのは、“意識低い系”社員をどうするか。社長が会社のためにと思い、新しいノウハウを導入しようとして、それがどんなに良いものであったとしても、モチベーションが低いために社員一人ひとりが動こうとせず、組織が停滞し続けていることに悩んでいるケースが多いというのが、300を超える中小企業をお手伝いしてきた私の経験に基づいたリアリティです。

「笛を吹いても社員が踊ってくれない」――中小企業の現場で、経営者が新しいことを始めようとしても、なかなか思うように従業員が動いてくれなくて悩んでいることは多いのではないでしょうか。