民主党政権における政策議論は、どうして上滑りしてしまうのだろう。なぜ、戦略だと位置づけておきながら論理性を欠いてしまうのだろう。
新興国におけるインフラビジネスが巨額化し、先進国は官民がタッグを組んで群がっている。
原子力発電、次世代電送網、高速鉄道網、産業用高規格道路、港湾拡張、巨大橋梁建設、新空港プロジェクト、水事業――東アジアのインフラ整備案件は2020年までに650にも及び、総投資額2000億ドル(18兆円)に上る見込みだ。中東、中南米まで広げ、更新需要を含めれば、2030年までに25兆ドル(2250兆円)にも達するという試算もある。
日本政府も、にわかに目覚めつつある。
産業界は業種の違いを超えて、政府支援強化要請の大合唱だ。それを受けて例えば、鳩山由紀夫首相は、ベトナムにおける原子力発電所第二期工事を日本企業に受注させるべくグエン・タン・ズン首相に親書を送った。仙谷由人・国家戦略担当相は、国際協力銀行の機能を強化、利用し、政府によるプロジェクトファイナンスを民間プロジェクトに付与して、受注競争を後押しする構想を打ち出している。民主党は世界のインフラビジネスの獲得戦略を、6月にまとめる成長戦略の柱として打ち出す。ある民主党幹部は、「独自の成長戦略に欠けると批判され続けたが、格好の材料を得た」と期待する。
官民の協力体制が弱体だと指摘され続けた日本の政府、産業化が今、ともに危機感を露にしているのは、“伏兵”に立て続けに敗れたからである。
ベトナムの原発第一期工事では今年2月、ロシアの国営企業が受注した。潜水艦の売買など軍事協力にまで、ロシア政府は踏み込んだと見られている。また、昨年末にはアラブ首長国連邦アブダビ首長国で、原発を韓国企業のコンソーシアムが勝ち取った。李明博大統領がアブダビ王族とのホットラインをフル活用したと言われている。フランスの大統領やドイツの首相が産業人を大勢引き連れ、トップセールスを展開することは良く知られているが、今回は海外インフラビジネスで実績の少ない韓国、ロシアに敗れてしまい、にわかに焦りが生じたという構図である。
だが、この俄仕立てで活気付く官民共同路線は、私にとってどうにも腑に落ちない点が二つある。