『社内プレゼンの資料作成術』がヒット中の前田鎌利さんが、そのエッセンスを伝えるセミナーを開催しました。前田さんがソフトバンクで培い、孫正義氏から「一発OK」を連発したプレゼン術の「超」基本をダイジェストでレクチャー。「ちょっとした工夫」で圧倒的な「スピード決裁」を生み出すヒントが満載です。そのセミナーを再現する連載第1回は、「社内プレゼン資料の“超”基本テクニック10連発!」をご紹介します。(構成:田中裕子)

ソフトバンクでも活用の「社内プレゼン術」(1)<br />プレゼン資料の「超」基本テクニック10連発!

社内プレゼンで最も重要なのは「スピード」

 社内プレゼンについて考えるうえで、もっとも重要なのは「スピード」です。
 なぜなら、ここ10~20年で、企業に求められるスピードが急速に速くなっているからです。事業展開のスピードが、企業の存続を大きく左右するようになっていることは、皆さんも実感されているのではないでしょうか?

 では、事業スピードを速めるためには、どうすればいいか? 意思決定スピードを速めることです。意思決定の回数を増やすことが経営者に求められているのです。そのためには、一回あたりのプレゼン時間を短くして、一回の会議でより多くの決裁を処理する必要があります。

 つまり、社員には、短時間で説得力のあるプレゼンが求められるということ。社内プレゼンで「一発OK」をとる力を身につけることは、自分自身のキャリアのためというだけではなく、会社の命運を握る事業スピードの向上に直結した課題なのです。

『社内プレゼンの資料作成術』には、そのための実践的なテクニックをめいっぱい盛り込みました。ここでは、そのなかから10個の「超」基本テクニックをダイジェストでお伝えしたいと思います。 

「超」基本(1)
画面サイズは「4:3」

 プレゼン・ソフトのスライドサイズの初期設定は、だいたい「4:3」になっているので、その設定を変更しないようにしてください。

ソフトバンクでも活用の「社内プレゼン術」(1)<br />プレゼン資料の「超」基本テクニック10連発!

 なかには「16:9」のサイズを使用する人もいますが、これは、広い会場で壇上からオーディエンスに向かって話すときや、経営者が社員に対してビジョンを語るときに適したサイズです。オーディエンスの「感情」に訴えかけるときには「16:9」がいいのですが、社内プレゼンで決裁者の「感情」に訴える必要はありません。通常の「4:3」のサイズのほうが、決裁者にとって違和感もなく、見やすいと感じます。迷わず、「4:3」を使用してください。 

「超」基本(2)
表紙には必ず「会議名」と「日付」を明記する

 スライドには必ず表紙をつけます。
 もちろん、表紙でもっとも重要なのはタイトルです。「これから、何についてプレゼンするのか?」が一目でわかるように、できるだけ短い言葉(13文字以内)で、スライド中央に大きく表示するようにしてください。これがわかりにくいと、決裁者は「何のプレゼンだ?」と戸惑い、その結果、プレゼン内容の理解度が下がることになります。

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 そして、忘れてはならないのが「会議名」と「日付」を明記すること。これは、思わぬミスをしないために非常に重要なことです。

 なぜなら、社内プレゼンは、決裁が通るたびに、課内、部内、経営層とステップを上がっていくもので、それぞれのステップで修正が入るからです。会議名と日付を明記することで、その修正をきちんと管理しておかなければ、どの時点でどの修正が入ったのか、正しく修正が反映されているか、などといったことがわからなくなってしまいます。しかも、「部内」会議のときに「課内」向けのスライドを表示してしまうといったミスも十分に起こりえます。
 そのようなつまらないミスを防ぐために、必ず「会議名」と「日付」を明記するようにしてください。

「超」基本(3)
ページ番号はページ右下に置く

 ページ番号も非常に重要ですから、スライドを立ち上げたら、まず設定する習慣をつけてください。
 ページ番号は、正確なコミュニケーションをするためのツールです。ページ番号がないと、決裁者は、「あの顧客満足のグラフのページをもう一回見せてほしい……いや、それじゃなくて……」などといった要領を得ない指示をせざるをえません。「5ページ目をもう一回見せてほしい」などとスムースなコミュニケーションをとるためには、必ずページ番号を振っておく必要があるのです。

 置く場所はスライドの「右下」です。人の目線は「Zの形」で動きますから、「右下」にページ番号をおけば邪魔にならないからです。

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「超」基本(4)
フォントは「これ」に決める

 いつも、フォントで迷うのは非効率です。次のフォントに決めてしまえば、それだけで作成時間は短縮されるでしょう。
 まず、キーメッセージは次のフォントにしてください。

●Powerpoint:HGP創英角ゴシックUB
 ●Keynote:ヒラギノ角ゴStdN

 キーメッセージは「最も伝えたいメッセージ」ですから、力強い極太のゴチックで決裁者に印象づけるのがベストです。
その他のテキストは次のフォントを使います。

●Powerpoint:MSPゴシック
 ●Keynote:ヒラギノ角ゴProN

 これも、ゴチックを使用します。明朝体のほうが「知的」に見えるかもしれませんが、プレゼン資料ではNGです。なぜなら、明朝体を老眼や目の悪い人が見ると、線が消えて見えることがあるからです。見えなければ、どんなに「知的」なフォントでも意味がありません。

 ですから、明朝体ではなくゴチックを使用するようにしてください。しかも、上記のフォントは、行間も文字間隔も詰まりすぎず空き過ぎず、非常に見やすいのでお勧めです。

「超」基本(5)
キーメッセージのフォントサイズは「100~200」

 キーメッセージのフォントサイズは「100〜200」にしてください。100以下だとインパクトに欠けるのみならず、小さい文字が並んだ「わかりにくい」スライドになってしまいます。また、200を超えると「やりすぎ」になります。キーメッセージは、決裁者にインプットすべき重要なメッセージですから、100~200の範囲で、できるだけ大きく表示できるように工夫するようにしてください。

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「超」基本(6)
キーメッセージは中央より「やや上」に置く

 キーメッセージは、スライド中央より「やや上」に置くようにしてください。
 なぜなら、決裁者は、スライドを映すスクリーンを、座った状態で見上げるからです。その角度で見ると、キーメッセージが中央かそれより下に配置されると、とても窮屈な印象を受けるのです。また、キーメッセージのような重要な情報はできるだけ上部に表示することで、後ろに座っている人も見えるようにする配慮も必要でしょう。

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「超」基本(7)
13文字の法則

 表紙のタイトルやキーメッセージは、必ず13文字以内でまとめるようにしてください。
 なぜなら、人間がパッと一瞬で視認できるのは、少ない人で9文字、多い人でも13文字が限界だからです。それ以上だと、文意を読み取るために「読む」という努力が必要になります。それだけ、理解するのに時間がかかってしまう。あるいは、わかりにくいプレゼンになってしまうのです。そのため、なるべく決裁者に負担をかけないためにも、キーメッセージは13文字以内に収めるようにしてください。

【例】

【before】売上未達を改善するための戦略提案について(20字)
【after】売上未達改善の戦略提案(11字)
 

「超」基本(8)
ポジティブメッセージは「青」、ネガティブメッセージは「赤」

「売上増」「経費削減」などポジティブメッセージは「青」、「売上減」「経費増」などのネガティブメッセージは「赤」に統一することで、わかりやすいプレゼンにすることができます。

【カラーの法則】
 ●ポジティブメッセージは「青」
 ●ネガティブメッセージは「赤」


 なぜなら、スライドを見た瞬間に、決裁者に「いい情報なのか?」「悪い情報なのか?」を知らせることができるからです。要するに、「話がはやい」のです。
 これは、国際的に通用するルールです。世界中の信号が「青=進め」「赤=止まれ」で統一されているように、「青」は「良好、順調、安全」のシグナルであり、「赤」は「不良、不安、危険」のシグナルとして使われているからです。

「超」基本(9)
事業フローはグラデーションで示す

 提案する事業のフローを示すときには、第1ステップから順にカラーのグラデーションで示すと効果的です。下のスライドのように「青」のグラデーションで展開すれば、事業遂行とともに「望ましい状態」に近づくことを印象づけることができるでしょう。

ソフトバンクでも活用の「社内プレゼン術」(1)<br />プレゼン資料の「超」基本テクニック10連発!

 なお、このような事業フローや過去の推移などは、必ず「左から右」に流すようにしてください。社員によって「左から右」だったり「右から左」だったりすると、決裁者が混乱してしまうからです。

「超」基本(10)
「定型フォーマット」を用意する

 社内プレゼンはできるだけ「定型フォーマット化」しておくことをお勧めします。
 表紙はもちろんですが、そのほかにも、提案内容の概要やスケジュールを示すスライドも定型化すると便利です。資料作成を効率化することができますし、うっかり必要な情報を書き忘れる「抜け漏れ」をなくす効果もあります。

ソフトバンクでも活用の「社内プレゼン術」(1)<br />プレゼン資料の「超」基本テクニック10連発!定型フォーマット例「提案内容の概要」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さらに、その定型フォーマットを社内・部署内で統一しておくと効果大です。なぜなら、プレゼンをする社員が誰であっても、決裁者はスライドの「どこ」を見れば、「どんな情報」が書いてあるかが把握できるからです。決裁者のスライド把握力が格段に上がることで、意思決定もスピーディになるわけです。

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 以上、社内プレゼン資料の「超」基本テクニックをお伝えしました。
 シンプルなことばかりですが、これらのポイントを確実に実行するだけで、社内プレゼンは確実に向上します。『社内プレゼンの資料作成術』には、さらにツッコんだノウハウを盛り込んでおりますので、ぜひご参考いただければ幸いです。また、これを社内・部署内で共有することで、会社の意思決定スピードは格段に上がります。ぜひ、実行していただきたいと思います。

ソフトバンクでも活用の「社内プレゼン術」(1)<br />プレゼン資料の「超」基本テクニック10連発!前田鎌利(まえだ・かまり) 1973年福井県生まれ。東京学芸大学卒業後、光通信に就職。2000年にジェイフォン(現ソフトバンク株式会社)に転職して以降、と17年にわたり移動通信事業に従事。2010年に孫正義社長(現会長)の後継者発掘・育成機関であるソフトバンクアカデミア第1期生に選考され第1位を獲得。孫正義社長に直接プレゼンして幾多の事業提案を承認されたほか、孫社長のプレゼン資料づくりも数多く担当した。その後、ソフトバンク子会社の社外取締役や、ソフトバンク社内認定講師(プレゼンテーション)として活躍。2013年12月にソフトバンクを退社、独立。ソフトバンク、ヤフー、株式会社ベネッセコーポレーション、大手鉄道会社などのプレゼンテーション講師を歴任するほか、全国でプレゼンテーション・スクールを展開している。著書に『社内プレゼンの資料作成術』(ダイヤモンド社)がある。