経営 X 人事

なぜソフトバンクの講師選定は
「伝える技術」より業務経験を重視するのか?

社内講師の募集・選考の
具体的なステップとは

 社内講師の選定方法について、もう少し具体的に説明します。

 まず、私たちは、講師を選考する際に社内だからといって選考基準を緩くすることは一切ありません。外部講師以上の研修を社員のみなさんに届けるためには、選考段階での妥協はできないわけです。

 社内講師の募集は、「公募」という形を取っています。また一方で、スカウトも行っています。公募は年に1回、毎年決まった時期に実施しています。

 認定までの具体的なステップは、「書類審査」→「面接」→「認定試験」の3段階に分けて実施しています。

 まず「書類」では、自身のこれまでの業務経験や、どんな研修を実施したいかなどの希望を記入してもらいます。具体的に何の研修を担当するかは、事務局から要望を出す場合もありますし、応募者に希望を書いてもらう場合もあります。

 いずれの場合も、研修講師として社員のみなさんに価値を感じてもらえるだけの経験や具体的なノウハウがあるのかどうかを書類上で確認します。

 続く「面接」では、「書類」に書かれていた内容について、人事の担当者からいろいろ突っ込んだ質問をしていきます。同時に、社内講師として大勢の前で「話す」部分について、最低限のスキルを確認します。

 ただ、ここでも重視するのは、現場の仕事を通じて成果を挙げてきた具体的な「経験・ノウハウ」があるかどうかということです。そして、社内講師になりたいという「想い」が感じられるかどうかということです。

 自分の経験やノウハウを社員に伝えていきたい、会社に貢献していきたいといった強い「想い」がどれだけあるかを、「面接」では、しっかりと見ていきます。

 最後の「認定試験」ですが、既存のコースを担当してもらう場合は、研修の一部を実際に行っていただきます。一方、新しいコースであれば、その内容に関してプレゼンテーションを行ってもらうこともあります。

 結局、見るところは同じ「経験・ノウハウ」や「想い」なのですが、ステップが進むに従ってそのレベル感が高くなっていくわけです。

 例えば、具体的な社内事例や自分なりの経験がうまく現場で使えるように伝えられるかどうかを見ていきます。この部分は社内講師の生命線になる部分ですので大切にしています。

 ちなみに社内認定講師(ICI)は、初年度は約80人の応募に対して、26人が認定されました。直近では32人の応募に対して13人が認定されています。初年度はそれまで前例がなかったので慎重な選考を行ったこともあり、非常に厳しい倍率になりました。

 制度上では、ICIの任期は1年ですが、本人の希望があれば更新していきます。現在では、社内認定講師(ICI)は100名を超える規模に達しています。

 社員が会社のために、自分がしてきた経験を伝えようと、勇気をもって応募することは本当にすばらしいことだと思います。

 ただ、基準に達していない場合には、お断りすることも実際には多々あります。講師の品質維持も人材開発部の重要なミッションであるためです。

 応募する社員とは、後日プロジェクトで一緒になったり、社内ですれ違うようなこともしょっちゅうあるわけですので、認定に関する合否の連絡は当然ながら丁寧かつ慎重に対応しています。

 応募者本人は応募に際して、自身の上長に確認をとっています。また、合否については本人と上長だけしか知らされません。なお、その年に不合格だった場合でも、再チャレンジが可能な仕組みになっています。

経営 X 人事 特集TOPに戻る

 

島村公俊

ソフトバンク株式会社人事本部人材開発部 ソフトバンクユニバーシティ立ち上げ時の研修内製化に従事。現在、社内認定講師(ICI)制度の企画、運営に携わり、100名を超える社内講師陣の育成も担当する。 2013年アジア初のPike's Peak Award、 2014年HRチャレンジ大賞人材育成部門優秀賞を受賞。 外部講演では、研修開発ラボ、慶應丸の内シティキャンパス、HRサミット、HRカンファレンス、東京都教育庁、早稲田大学など多数実施。最近は、教職員向け、大学生、高校生向けの講演会、ワークショップも実施している。社内外含め、累計登壇回数800回以上、受講者数1万8千人以上の登壇実績。

 


ソフトバンク流「研修内製化」の真実

企業の人事部門では今、「研修の内製化」がひとつのキーワードになっている。どちらかといえばそれは、教育コストの削減という経営の要請が発火点になっているが、一方では内製化をポジティブにとらえ、成果を上げている企業もある。5年ほど前から研修の内製化に取り組み、現在では100名を超える社内講師を抱えるソフトバンクは、その代表的な企業と言える。内製化を成功に導き、成果を上げる秘訣について、ソフトバンク人材開発部の島村公俊氏に語ってもらった。

「ソフトバンク流「研修内製化」の真実」

⇒バックナンバー一覧