OJTが不活性に陥っている。もう10年以上にわたって指摘され続けていることではありますが、なかなか万能薬のような手立てはなく、企業の試行錯誤が続いています。また、この数年、「研修内製化」が育成における重要テーマに浮上してきました。それは主にはコスト削減の要請から始まった動きですが、ここにきて経営に資する人材を育てるための戦略的な課題になってきた観があります。

「なにをどこまでやるか」
について正解はない


 この「育成カテゴリー」では、幅広く人材育成について語られることになります。

 大きく分けると「研修」と「OJT」が主なテーマになるはずです。

「70:20:10」。これは人材育成の領域で広く知られるものですが、人の成長を決める要素の比率です。すなわち、成人の学びは70%が自分の仕事経験から、20%が他者の観察やアドバイスから、10%が本を読んだり、研修から、ということです。

 オトナは圧倒的に経験から学んで成長する、ということですから、OJTが重要なのですし、その機能不全が問題視されているわけです。

「若手が思うように育たない」という現場マネジャーの声をよく聞きます。いろいろな背景や要因があるのでしょうが、おそらく若手自身が劣化しているからではなく、OJTに問題があるのだろうと考えられます。

 ではOJTはどうすれば再活性化できるのか。

 これには特効薬はなく、新たな仕組みの導入や風土の醸成が必要だと思われます。このカテゴリーで、最新事例を紹介していきたいと思います。

 一方、研修はどうなのでしょうか。前述したように研修の成長に対する影響度は10%。しかし、10%に過ぎないから軽視していいのかというと、必ずしもそうではありません。

 70%を占める経験を学びにつなげるために10%の研修がある、と言ってもいいでしょう。

 研修については企業の実態はさまざまです。それぞれの考え方によって「やるべき」から「必要なし」まで、かなり幅広い判断があり、実践があるようです。

 多くの企業では、新入社員研修を実施するでしょう。しかし、一か月以上に及ぶ現場での実習をもって研修とする製造業もあれば、マナー研修だけやってあとは現場に配属するという流通業もあります。

 また、新入社員研修の後、現場での業務を経て、半年後にフォローアップ研修をする企業もあれば、1年目は新入社員研修だけ、という企業もあります。

 その後についても、3年目研修や、管理職前の研修、さらにはマネジャー研修のような階層別研修を手厚く実施する企業もありますし、それほど熱心ではない企業もあります。業種や職種によって、研修の必要性に違いもあるでしょう。

「なにをどこまでやるか」については正解はなく、企業が必要に応じて設計するべきものなのだと思います。

 経営に資する育成とはどのようなものか。

 育成カテゴリーでは、その一点を巡ってさまざまな実務家に実践知を語っていただきます。