制空権が島嶼防衛の決定的要素であり、それが確保できるか否かが疑問である以上、オスプレイ17機に費やす3600億円とAAV752輌の350億円は、F35A約20機を追加購入するのに充てるほうが合理的だろう。一部を空中給油機(現在4機)の増勢に向けてもよい。防空能力の向上は単に尖閣諸島のような無人島の確保のためだけではなく、より広範な防衛能力に寄与する。

 昨年11月の安倍・習近平会談で合意された「戦略的互恵関係」の進展が実現し、尖閣諸島では日本による実効支配の継続と現状の不変更を双方が暗黙のうちに認める状況となっても(政府・自民党は「棚上げはけしからん」と言った手前、今では「脇に置いた」と言うことがある)、新鋭のステルス戦闘機が1個飛行隊(約20機)多いことは仮想敵を特定しない、「基盤的防衛力」として無駄にはならない。

 そもそも「南西諸島の防衛」は冷戦終了で「ソ連の北海道侵攻」のシナリオが成り立たなくなったため、陸上自衛隊が「組織防衛」のために言い出したことだ。当初、海・空自衛隊では「陸上自衛隊の苦し紛れの説」と苦笑する人が少なくなかった。だがそれに便乗すれば海・空自衛隊も予算を取れるから同調する結果になっている。

一度中国と戦闘が始まれば
攻撃は沖縄や本土に及ぶ

 大局的に考えれば、もし中国軍が尖閣諸島を占領し、自衛隊がそれを奪回するのに成功したとしても、自衛隊の演習とは違って一度始まった中国との戦争がそれで終わる可能性は低い。そこで中国が負けて引き下がっては面目、政権の存続に関わるから、尖閣諸島だけでなく日本側の策源地である那覇空港や那覇港、佐世保港や九州の航空基地等への航空攻撃、巡航ミサイルなどによる攻撃も考えておかねばならない。

 もし米国が必死で仲裁して紛争の拡大を防げたとしても、その後の日中は軍備競争のスパイラルに入り込む公算が大だ。中国のGDPは昨年で日本の2.2倍余、今年度の防衛費8896億元(約16.9兆円)は日本の3.5倍だ。中国の経済成長率は低下しても、なお成長は続くから、10年後にはGDPで日本の4倍か5倍、防衛費は日本の6倍程度にはなりそうだ。これと軍備競争で張り合えば日本の財政破綻は必至の形勢だ。

 戦前の日本の軍人と同様、今日の自衛隊幹部も視野が狭く、国全体の安全保障よりも、「組織防衛」をもっぱら考えるから、島嶼防衛ではほぼ唯一無二の要素である制空権を確実に握る保障がないまま、上陸作戦専門の部隊や装備を揃えようとする。この問題は日本政府・防衛省に防衛、安全保障に関する総合的な判断力が欠けていることを示すものとして重大と考えざるをえない。